経済の中心地は、時代とともに移り変わって行きます。
18世紀の欧州では産業革命によって増大した経済力によってヨーロッパ諸国はGDPシェアを大きく伸ばし、19世紀の米国の台頭と20世紀の日本の高度経済成長が加わって、G7に代表されるような近世の国際経済を成すベースが出来ました。21世紀に入ると中国やインドを始めとするアジア諸国が急速に成長し、今では世界経済を動かす重要な国となりました。
そして次の経済の中心地はアフリカへと変遷していくと言われています。
今回はそんなアフリカでの繊維業界について触れてみたいと思います。
経済成長が工場移転を誘発する?
21世紀におけるアジアの経済成長の歴史を見ると、その国の経済が成長する事により、進出のメリットが増大し、より前向きに進出を検討すべき業態と、逆に撤退を考える業態が存在します。
基本的には経済成長が著しい国では、外資企業の進出が多くなります。
国策として、外資企業を呼び込み技術や資本を国内に取り込み経済成長のスピードアップを図るという目的があります。
結果的に、GDPの増大とともに一般的には国民の所得水準も上がり生活水準も上昇していくことになります。
しかし、その国の安価な労働力を求めて進出してきている企業にとっては、その国の経済成長やGDPの躍進は歓迎されざる状況といえます。
経済成長は最低賃金の上昇を促します。
最低賃金の上昇は、元々低い賃金でビジネスモデルを構築している製造業にとって大きな打撃になるのです。
事実、ベトナムに進出しているプラスティック工場などでは、経済成長に伴う賃金上昇やロジスティックコストの上昇などから、2020年以前から工場移転を真剣に検討している企業も存在するのです。
これは経済の歴史を紐解けば、どの国でも起こっている現象と言えます。
繊維業も例外ではありません。
中国や東南アジアの一部で人件費が上昇し、多くの繊維工場が労働力の安い国に代替地を求めざるを得なくなっているのです。
アフリカでの繊維業の成功例
いくつかのアパレルメーカーはすでにアフリカ大陸に店舗を構えました。
H&MやPrimarkなどはアフリカから材料を調達していますし、Urban Armor Gearや中国最大の靴メーカーの華建はエチオピアと東アフリカで事業を拡大しています。
参考:JETRO ビジネス短信
参考:東洋経済ONLINE
また、ルワンダのC and H Garmin工場のようなアパレル専門メーカーは、ユニフォーム、安全ベスト、ミリタリーキットを生産し、ヨーロッパや米国に輸出しています。
アジアのアパレルメーカーのアフリカへの流入は、アフリカ大陸の繊維産業に大きな影響を与えると考えられています。
これらの巨大工場が大規模な雇用や輸出収入を生み出し、現地の経済の活性化に一役買うことになります。
また、工場の建設や操業にともなう消費財なども発生するため、その経済効果は非常に大きなものとなります。
アフリカの繊維業にとってのアドバンテージ
アフリカの繊維業は多岐に渡りますが、その中でも綿花は非常に有力な農産品です。
アフリカには、綿花を栽培し販売している国が多く存在します。
そのうちの6カ国が「Cotton made in Africa」と銘打って綿花を栽培しており、綿花ビジネスだけでも45万人のアフリカ人が雇用されています。
このビジネスはアフリカ最大の雇用創出産業にもなっているのです。
しかし、綿花の栽培と販売だけが繊維産業ではありません。
南アフリカは、航空会社の製品に麻を提供するなど、テクニカルテキスタイルの分野にも進出しています。
参考:DREAM NEWS
エチオピアでも繊維工場が増え始め、地元の人々を雇用しています。
中国やアジア諸国などの賃金上昇が原因で工場移転をした企業の助けにもなっているのです。
H&Mは、豊富で安価な労働力を求め、アフリカに工場を開設しています。
また、アフリカで栽培・収穫された綿花から、世界市場向けに糸や毛糸などの製品を製造しています。
アフリカの繊維業向け免税措置
アフリカ大陸の経済力を高めるため、米国議会は2000年5月18日に2000年米国貿易開発法を通じてアフリカ成長機会法(AGOA)に署名し、ケニア、マラウィ、レソト、赤道ギニア、ガボン、ジンバブエ、ガンビアなどの対象国を継続的に支援してきました。
*現在はギニア、マリ、エチオピアのアフリカ3カ国に対するアフリカ成長機会法(AGOA)に基づく特恵待遇を2022年1月1日に終了。
AGOAを通じて、米国はアフリカ製品に市場を開放しています。
繊維製品はその大部分を占め、米国市場向けのサハラ以南のアパレル輸出業者に免税アクセスを提供し、アジア諸国などに強い競争力を持っています。
したがって、生産コストの削減により、米国市場では幼児服、綿糸、毛、綿繰りなどのアフリカ繊維製品が多く流通しています。
このようなアフリカが持つ強みを生かして、生産拠点としての進出を考えることができると思います。
また、繊維業に限らずアフリカは様々な強みがあり、人口も非常に多くマーケットとしても非常に魅力的な先です。