水曜日, 5月 14, 2025

【2025年版】アフリカビジネスの注目国ナイジェリア|経済・人口・日系企業の進出状況を徹底解説

アフリカ最大の人口と、原油など豊富な天然資源を有する西アフリカの地域大国ナイジェリア

アフリカ大陸の縮図と言われるほどの民族、宗教、言語、文化の多様性を持ち、非常に大きな経済的ポテンシャルを持つナイジェリアは、これからのアフリカビジネスにおいて絶対に見逃せない国です。

まず、最新のデータを参照しながら、ナイジェリアの現在の姿と、将来的なポテンシャルについて確認していきましょう。

アフリカの縮図、ナイジェリアの基礎データ

世界一「若い」人口大国

ナイジェリアの人口は、2024年の統計でアフリカ大陸で最大の2億2900万人です。しかし、注目すべき点はそれだけではありません。国連人口基金の統計によると、ナイジェリアは非常に若年人口比率が高く、0〜14歳までの人口だけで全体の42%を占めているのです。そのため、今後数十年に渡ってハイペースの人口増加が続くと予想されており、実際に国連では2054年にナイジェリアの人口は3億7600万人に達すると予測しています。(引用元:国連世界人口予測2024年版)

これは一体何を意味しているのでしょうか?今後ナイジェリアでは15歳から64歳の生産年齢人口の比率が増加する「人口ボーナス」により長期的な経済成長が見込まれています。なぜなら、「人口ボーナス」には、社会に豊富な労働力が供給され、所得を増やした労働者によって消費市場は拡大し、さらに社会保障費も抑えられるというメリットがあるからです。

同じように、日本でも第二次世界大戦後に起きた人口ボーナスの結果、都市化、高速鉄道や高速道路などのインフラ整備、モータリゼーション、家電製品の普及などを通じて高度経済成長を達成しました。

つまり今後、ナイジェリアにおいても、長期的な経済成長とビジネスチャンスの拡大が見込まれるのです。

アフリカ有数の多様性

ナイジェリアはアフリカ有数の多民族国家で、言語、風習を異にする250以上の民族、500もの言語が存在すると言われています。そのために、公用語は旧イギリス植民地時代に普及した英語とされています。

その中でも特に人口が多く、三大民族と呼ばれているのがハウサ族(北部、イスラム教徒、約30%)イボ族(南東部、キリスト教徒、約20%)ヨルバ族(南西部、キリスト教徒、約20%)です。   

また、宗教は北部はサハラ砂漠を越えて古くから行われていた中東、北アフリカとの交易によってもたらされたイスラム教南部は欧州列強の進出によって布教されたキリスト教に二分されており、独立後も宗教間の対立による暴力事件が発生しています。特に、近年はイスラム過激派の存在が治安悪化の要因となってきました。

広大な国土

ナイジェリアの面積は92万3,768kmで、日本の2.5倍に達しており、世界31位、アフリカ大陸55カ国の中でも14位という大きな国です。(引用元:外務省ウェブサイト)気候的には、最南部が熱帯モンスーン気候、中央部から北部はサバナ気候に属しており、年間を通して高温多湿と言えます。

1960年の独立後、首都は南西部のラゴスに置かれていました。ラゴスは人口1000万人以上で現在でも同国の最大都市ですが、地域対立の解消を目的として、1991年に国のほぼ中央にあるアブジャへ移転されました。

歴史と政情

ナイジェリアの歴史と政情についても簡単におさらいしておきましょう。

西アフリカ沿岸は大航海時代以降、「奴隷海岸」と呼ばれて奴隷貿易が広く行われた暗い歴史があります。その後19世紀に奴隷貿易は禁止されたものの、19世紀末にアフリカではほとんど全ての国が欧州列強の植民地とされ、ナイジェリアもイギリスによって領有されました。

1960年に独立した後は、民族対立による政情不安の時代が続きます。特に1967年に勃発したビアフラ戦争では、北部ハウサ族が主導する連邦政府と東部のイボ族勢力が対立し150万人以上の犠牲者が出ました。その後も軍部のクーデターが繰り返されますが、1999年の民政移管後は選挙による政権交代が行われています。

国際関係

ナイジェリアは西アフリカの地域大国として、周辺諸国に対する強い影響力を持っています。首都アブジャには西アフリカ12ヶ国が加盟する西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の本部が置かれ、域内の貿易活性化、経済統合、安全保障に向け活動しています。

なお、ECOWASをはじめ、アフリカ域内の経済統合や貿易活性化の取り組みについては、本ブログのこちらの記事で詳しく解説していますので、ご興味があればぜひご覧ください。

ナイジェリア経済とアフリカビジネス

 次に、ナイジェリアの最新の経済状況について確認していきましょう。

GDP/経済成長率

IMF(国際通貨基金)の統計によると、GDPは従来アフリカ内で1位を保っていましたが、2023年の統計ではエジプト、南アフリカに次いでアフリカの中では3位となる約3640億ドルで、世界ランキングは42位でした。

富裕層、中間層も増加しているものの、全体としては格差が非常に大きいため、一人当たりGDPは1637ドルで世界159位、アフリカの中でも26位とかなり順位が下がってしまいます。

なお、他の大陸でナイジェリアと同程度の経済規模の国はアジアではイラン、ヨーロッパではルーマニア、南北アメリカ大陸ではコロンビアといった国々です。

今後の見通しですが、同じくIMFの推計値によると2024年から2029年まで年率3%〜3.3%程度の成長が見込まれています。(出典:IMF The World Economic Outlook database)また、経済構造は、従来は豊富な原油輸出の収入に頼る形となっていましたが、近年はIT、サービス産業といった分野も徐々に拡大してきました。

主要産業

ナイジェリアは世界有数の産油国です。具体的には、原油の生産量が世界12位、輸出量が世界8位、さらに天然ガスも世界第10位の埋蔵量を誇り、2000年代以降は国際的な原油価格上昇により、経済成長を牽引してきました。現在も外貨収入の9割を石油関連製品が占めています。(引用元:JETRO)

しかし、ナイジェリア国家統計局統計によると、産業別のGDP構成比で最大なのは農業(26%)で、貿易業(16%)情報通信産業(9%)がそれに続き、石油関連産業は全体の7%と比較的低い順位となっています。(引用元:JICA)そのため、アフリカ各国の課題となっているモノカルチャー経済とは一線を画していると言えるでしょう。

農業については、人口の約5割が従事しており、主食であるキャッサバと米の生産量はアフリカ最大を誇ります。しかし米については、現在も国内需要を賄いきれておらず、国策として自給率100%を目指し増産に取り組んでいます。

なお、ナイジェリアをはじめとしたアフリカの最新の農業動向については、本ブログのこちらの記事で詳しく解説しています。

デジタルエコノミー

近年、ナイジェリアでは携帯電話の普及とインターネット利用者の増加により、IT産業が急速に発展しています。特に、Eコマースの市場規模はアフリカ最大で2024年に85億USDと推計され、2029年まで年率11.9%という非常に高い成長率が見込まれています。(引用元 米国Mordor Ingelligence)

このような急成長の背景として、2020年のコロナ禍の影響と、国としての平均年齢が若いためデジタル決済、オンラインショッピングに対する順応性が高いことが挙げられるでしょう。現在、アフリカ11ヶ国に展開するアフリカ最大のECモールであるJumiaもナイジェリア発の企業です。

なお、アフリカにおけるECの最新事情については本ブログのこちらの記事で詳しく解説しています。

治安、紛争リスク

現在のナイジェリアでは、宗教対立に起因するテロや、外国人を狙った誘拐事件が発生しているため、外務省の海外危険情報の最新版では、全土においてレベル2(不要不急の渡航中止)以上の警告が出されています。特に、北東部のいくつかの州では、イスラム過激派ボコ・ハラム、イラク・レバントのイスラム国(ISIL)西アフリカ州といったテロ組織による襲撃が発生しているために在留邦人への退避勧告(レベル4)が発令されており、海外からのビジネス投資に対してもマイナス要因となっているのが実情です。

また、昨今の物価高騰や貧富の格差拡大により、首都アブジャ、最大都市ラゴスなどの都市部の治安も悪化しており、犯罪発生率が上昇していることにも警戒が必要です。

ナイジェリアでビジネスを推進する日本企業

ここまで紹介してきたように、ナイジェリアはまだまだ課題はあるものの、アフリカ有数の経済規模を誇り、将来的な経済発展のポテンシャルも非常に大きい国です。

しかし、日本企業によるビジネス進出はまだまだ進んでおらず、2023年時点でナイジェリアに進出する日系企業はわずか51社、日系企業による投資額も57億円に過ぎません。では、どういった企業が現在ナイジェリアでのビジネスを開拓しているのでしょうか?

味の素

日本を代表する調味料メーカー、味の素株式会社は、1991年からナイジェリアにおける日本発のグローバルうま味調味料である「味の素」の製造、販売を開始しました。さらに、地元の伝統的なうま味調味料であるダダワ(イナゴ豆を発酵させて作られる、納豆に似た調味料)をベースに開発した「デリダワ」を開発し、現地マーケットへのさらなる浸透を図っています。

ホンダ

ホンダのナイジェリアビジネスの歴史は古く、1980年代に遡ります。当時、ナイジェリアでは石油収入の増加によりオートバイの需要が急増したため、ホンダは1981年に現地生産を開始しました。その後、経済の低迷や中国製、インド製のライバル商品とのシェア争いといった厳しい時期も経験しながら、40年にわたり事業を継続し、2019年には累計100万台以上を達成しています。また、2015年からは四輪車の現地生産も開始し、現在に至っています。

大塚製薬 

大塚製薬は、2022年からナイジェリアの最大都市ラゴスでポカリスエットの試験販売を開始しました。2023年には58億円を投資して同国内にアフリカ初の生産設備を立ち上げ、本格的な進出を進めています。

株式会社ケップルアフリカベンチャーズ

2018年に設立されたKepple Africa Venturesは、「アフリカに新しい産業を創る」ことをミッションに活動するベンチャーキャピタルです。

同社は、豊田通商、SBI ホールディングス、三井住友信託銀行、独立行政法人国際協力機構(JICA)、海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)といったパートナーから出資を受け、アフリカ各国で既存インフラ、システムのデジタル化に取り組むスタートアップ企業育成をミッションとしており、すでにアフリカ11ヶ国の103社に対し投資を行っています。

まとめ

今回の記事では、人口ボーナス期を迎え長期的に経済発展が見込まれるナイジェリアについて紹介いたしました。アフリカへのビジネス進出を成功させるためには、まず事前の現地リサーチと、現地の実情を把握した上での戦略的な事業展開が大変重要です。

その時強い味方となるのが、アフリカビジネスのエキスパートとして豊富な実績、ノウハウを持つ株式会社ビィ・フォアードが提供するマーケットリサーチサービスです。詳しくは以下のリンクからご確認ください!

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参照元:
国連世界人口予測2024年版
外務省
IMF The World Economic Outlook database


アフリカビジネス事務局
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BE FORWARDは、中古自動車の輸出販売をメインに、アフリカに関するビジネスを幅広く展開しています。 月間販売台数15,000台、アフリカをはじめ世界207の国・地域で商取引を行うグローバルカンパニーです。 越境ECサイトとしては、月間6,000万PV、ネット通販売上高ランキング国内第1位(2023年)。 創業20年、つねに前へとアフリカでのビジネスを切り拓いてきました。その経験と実績をもとに、アフリカビジネス進出を検討する上で役に立つ、アフリカ現地の最新情報をお届けします。

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