経済発展が目覚ましいアフリカ諸国。近年では様々なビジネスが軌道に乗り、地域経済に貢献をし、新しい雇用も生まれています。
しかし、経済発展の副産物として必ず発生するのが廃棄物の問題です。現在、アフリカでは適正に廃棄物が処理されていない事から、公害や疫病、水質汚染などの問題が発生しています。
今日は、そんなアフリカ諸国の廃棄物処理(リサイクル)に触れてみたいと思います。
アフリカでのリサイクルの現状
地球全体では、毎年20億トン強の固形廃棄物が発生しており、このうちリサイクルされているのは約19%に過ぎません。
また、UNEA5.2において、プラスチックごみによる汚染撲滅のための決議がなされましたが、プラスチック廃棄物は、全世界で年間2億4,200万トン以上のプラスチックが発生し、その10%未満しかリサイクルされていません。 このようなリサイクル率の低さは、アフリカではなおさらです。
毎年発生する1億2,500万トンの固形廃棄物のうち、70~80%はリサイクル可能です。
しかし、アフリカ大陸では、この廃棄物全体のわずか4%しかリサイクルされておらず、リサイクル後に再製品化される割合も少ない状態です。
アフリカでは、年間約1,600万トンのプラスチック廃棄物が発生しており、これは世界で発生するプラスチック廃棄物の6%に当たります。
したがって、アフリカだけでなく、地球全体で廃棄物を循環型サイクルへと移行することが急務となっているのです。
アフリカにおけるリサイクルの最大の課題は?
アフリカ大陸の約60%に当たる34カ国以上で、廃棄物管理に関する重要な法律が制定されており、これがリサイクルを実現するための枠組みとなっています。
しかし、現状としてアフリカ大陸では大きく分けて2つの問題があります。
一つ目は、アフリカ大陸の廃棄物管理サプライチェーンにおいて重要な要素である、非正規な廃棄物収集業者に対する罰則が欠如している事です。
大陸のリサイクル可能な廃棄物の大半を回収しているのは、非正規の収集業者です。都市によっては、リサイクル可能なゴミの90%を非正規の業者が回収し、リサイクルせずに処分しているところもあります。
平均して、廃棄物収集業者は、廃棄物の収集、分類、販売を通じて、発生する廃棄物の20%から50%をリサイクルしています。
しかし、こうしたインフォーマルな廃棄物収集業者に適正処理をさせるための有効なインセンティブが存在しないのです。
それどころか、社会的地位の低い者という烙印を押されたり、自治体や治安当局から虐待を受けたり、その他の阻害要因によって生計を立てることが出来ない廃棄物収集業車さえ存在するのです。
必要なのは、こうしたインフォーマルな廃棄物収集業者が、共同組合、自助グループ、コミュニティなど、正式に認められたグループになることです。そうすることで、彼らは正式に認められた構造の中で真っ当なビジネスを行うことができ、アフリカ大陸の廃棄物管理の現場でサービスをさらに拡大するために適正な利益を得ることが出来ます。
二つ目の問題は、アフリカの廃棄物の現状を反映していないリサイクルプロセスです。
アフリカで発生する固形廃棄物のうち、プラスチック廃棄物は13%に過ぎませんが、アフリカの廃棄物のうち、約57%は有機物です。
したがって、有機廃棄物をリサイクルすることは、アフリカにとってより多くのメリットをもたらします。
またプラスチックに比べて参入業者が少ない為、ブルーオーシャンとも言えます。また、有機廃棄物リサイクル事業は、より広範囲に影響を与える可能性もあります。
例えば、農業廃棄物をバイオマス発電の燃料として回収すれば、木炭に代わるクリーンなエネルギーの調達が可能になります。
このリサイクルで、森林伐採の規模を最小限に抑え、毎年70万人もの死者を出している大気汚染を最小限に抑えることができます。
環境系スタートアップ企業は、有機廃棄物をリサイクルしてクリーンな代替エネルギーを作るという、年間200億ドル規模のビジネスチャンスを手に入れるために奮起しているのです。
アフリカ大陸と世界にとってリサイクルが不可欠な理由
リサイクル事業がアフリカにもたらす経済的、環境的なチャンスは無視できません。収益面において今後、廃棄物の適正処理が浸透することでインフォーマルな廃棄物収集業者が活躍できる場面は少なくなります。
しかし彼らは、最も発生率の高い有機廃棄物をリサイクルするビジネスへ方向転換することにより、利益を得ることができます。また、成長著しい建築分野では、プラスチック廃棄物を舗装用タイルにリサイクルする事業に投資が集まっています。
Plastic paving: Egyptian startup turns millions of bags into tiles
しかし、プラスチックリサイクルも、アフリカにおいて可能性の高い分野です。
例えばナイジェリアでは、プラスチックリサイクルへの投資を増やすことで、毎年2億5,000万ドルの経済効果があると言われています。
南アフリカでは、プラスチックリサイクルによって4000人以上の直接雇用と3万人以上の間接雇用が生まれ、給与として1600万ドル以上の個人所得を生み出しています。
環境面では、現状維持で世界の開発ニーズを満たすには、2050年までに天然資源の採取量を200%に増加させる必要があると予測されています。
しかし現在の天然資源採取量は、地球が持続的に供給できる量を1.6倍も上回っています。そのため、資源の採取を最小限に抑えるために、リサイクルが重要になってきているのです。このままではアフリカ大陸のみならず、地球の天然資源は枯渇してしまうかもしれません。
アフリカで活躍するリサイクル
・Cambridge Industries
1日あたり1,400トンの都市ゴミを処理し、年間185GWHrの電力を生産し、エチオピアの全国へ送電されています。 これは、アディスアベバの25%の家庭の電力をまかなうのに十分な量となります。
Wecyclersは、低価格のカーゴバイクを使用した便利な家庭用リサイクルサービスを提供しています。
Bekiaは、エジプトを拠点とする、スタートアップのリサイクル企業です。
2017年にスタートしたもので、プラスチックや電子機器、紙などの家庭ゴミを売ることができ、その代わりに、日用品や学用品などを購入できるポイントを獲得できます。
・Coliba
ガーナのプラスチック廃棄物の問題に取り組み、環境の持続可能性を促進するため、2016年にPrince Agbataが共同設立しました。プラスチック廃棄物、紙、飲料缶を回収し、新しい製品にリサイクルしています。
ナイジェリアを拠点とする新興企業で、廃棄物管理を保護し改善するために、優れた廃棄物リサイクルサービスを地域社会に提供することを目的としています。
Victor Amusaが共同設立したこの企業は、ゴミ捨て場や埋立地に代わる手段を自治体に提供し、廃棄物の無差別処理を減らし、地域社会の経済発展の手段としても役立っています。
まとめ
アジア諸国でもそうですが、経済発展の裏側にはどうしてもゴミ(廃棄物)の問題が伴います。
廃棄物処理のインフラもそうですが、分別廃棄に対する考え方や住民に対する分別廃棄の重要性の教育など、問題は山積みです。
大きな人口を抱えるアフリカ諸国においては、前述のリサイクル企業だけでは対処しきれません。
日本においても高度経済成長期にゴミの処理や公害に悩まされた結果、現在のような廃棄物処理システムが出来上がりました。
この廃棄物処理技術を輸出することにより、アフリカの地で日本のサムライが活躍できる場は非常に多くあると言って良いでしょう。