日本は、世界の開発途上国に対し、様々な支援を行っています。近年では、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標SDGsにも積極的に取り組み、地球の未来や世界の平和を守るとともに、日本の存在感を高めています。
今回は、アフリカへの支援として、JICA(独立行政法人国際協力機構)の起業家・スタートアップ支援事業の取り組みから、アフリカ現地企業と、アフリカにアプローチする日本企業の最新情報をお伝えします。
ビジネス・イノベーションを創出する、Project NINJAとは?
Project NINJAのNINJAとは、Next Innovation with Japanの頭文字です。2020年1月、JICAが開発途上国におけるビジネス・イノベーション創出に向けた起業家・スタートアップ支援事業として始動しました。Project NINJAの活動を通じて、起業に向けた啓発活動、起業家が抱える課題の特定や政策の提言、経営能力の強化、起業家間や関係者との連携促進、開発途上国の起業家と日本企業とのマッチングや投資促進等を実施しています。
コロナ禍の世界で新しいソリューションを示すビジネスプランコンテスト
新型コロナウイルスは、私たちの社会構造や経済活動に大きな変化をもたらしました。そのような状況の中、JICAはビジネスプランコンテスト「NINJA Business Plan Competition in response to COVID 19」を実施しました。応募総数2,713社の中から優秀企業69社を選定、その中からさらにFinalists10社を選定し、2021年にアフリカ新興テック、ピッチ決勝戦を行いました。コロナ禍の中で、医療、交通などの分野で革新を起こす企業が選出されました。今回は、優勝したM-SCAN、特別賞を受賞したLifestores Healthcare、その他注目の企業をご紹介します。

アフリカ現地スタートアップ企業の取り組み
・ウガンダ:超音波診断で妊産婦を支える「M-SCAN」
M-SCANは、妊産婦の死亡率の危険因子を検出できる携帯型超音波診断装置を提供しています。
新型コロナウイルスにより、病院での出産前の定期健診の受診が困難になった妊産婦が増加。そのような方からの問い合わせの増加を受けて、自宅で超音波診断を受けられるサービスを開始しました。
2022年、Cisco主催のGlobal Problem Slover Challengeで入賞。Save the Childrenの出資の元、妊産婦死亡率を減らす活動にも取り組んでいます。
・ナイジェリア:薬局向け管理システム「Lifestores Healthcare」
Lifestores Healthcareは、主に薬局を対象に、医薬品の在庫管理やグループ購入割引システムを提供しています。消費者は必要な医薬品を求めて薬局を巡る必要がなくなり、より安価に医薬品を購入することができます。現在はナイジェリアの10%以上、700以上の薬局や病院にサービスを提供し、月に10万人以上の患者に利用されています。
2022年に5周年を迎え、健康に関するセミナーや妊婦向けの情報提供などの発信も続けています。

・ガーナ:非接触型ICカードを使ったキャッシュレス決済サービス「Transonica」
Transonicaは、クレジットカードと同サイズのカードを使用して、商店やレストラン、美容院、バスの運賃などの支払いをキャッシュレスで行えるサービスを提供しています。また、Transonicaカード保持者を対象に、タクシー予約やバスのリアルタイムの位置情報を提供するサービスなども展開しています。
Transonicaの創業者は、JICAの人材育成プログラムの課程で日本に滞在中、Suicaから着想を得たと話しています。
日本の楽天グループは、アフリカのキャッシュレスカードによる安全な決済サービスの提供は社会的意義が大きいと考え、フィンテック関連サービスの知見を活かし、Transonicaの事業にメンタリングで支援協力することを決定しました。
・コートジボワール:交通系ICカード、アプリの提供「Moja Ride」
コートジボワールの都市アビジャン市では、タクシーやバスごとの運行情報や料金システムが統合されておらず、乗客はサービスを利用するたびに運行スケジュールや目的地の確認、料金交渉などを行う必要があります。
そのような環境の中、Moja Rideが提供するMoja Carteはカードを使用したQRコード決済が可能で、安全、簡単に支払いができます。Moja Carteと連動したMoja Walletでは、モバイルアプリを通して、タクシーやバスの予約や支払いができます。運転手側も乗客の支払った運賃を即座に入手でき、ガソリン代などの費用に充てることも可能です。
アフリカ企業を後押しする日本企業の取り組み
アフリカは、今後のさらなる人口増加やデジタルエコノミーの流通等、新しいビジネスの大きな可能性がある一方、高い失業率やインフラ整備の遅れといった問題も抱えています。
Project NINJAでは、アフリカの起業家と日本企業とのマッチングや投資促進も実施しています。前述のTransonicaのように、現在のアフリカが抱える問題を解決しビジネスを成功へと導くスタートアップや新しい取り組みに注目した日本企業が様々な支援をしています。
・アフリカのモビリティ分野に注目する「豊田通商株式会社」
豊田通商株式会社は、「with Africa for Africa」という理念のもと、4つの領域(モビリティ、ヘルスケア、消費財、電力インフラ)で事業を展開しています。
その中でも特に、交通インフラの未整備や、移動サービス事業の未発達などの問題を新しい技術やサービスで解決することを目指し、アフリカで活動するモビリティ関連スタートアップ企業への出資・融資に特化した投資会社、Mobility 54 S.A.S.を設立しました。
西アフリカの公共交通サービスの品質向上を期待し、前述のMoja RideにもMobility54を通して出資しています。
・農業でアフリカでの事業展開を目指す「株式会社商船三井」
株式会社商船三井は、LNG船、FSRU発電船などの事業を通して現地の企業と長期契約を結ぶことや、コーポレートベンチャーキャピタル「MOL PLUS」を通して現地のスタートアップに投資を行うなどして、アフリカにアプローチしています。
船関連の事業や投資のほか、アフリカ現地での支援も行っています。
2021年、アフリカの経済発展に伴い農業の機械化が進むことに着目し、アフリカへの中古農機輸出事業を開始しました。
唐沢農機サービスと業務提携、同社から農機を調達し、現地の農地に日本の農機が適合するかの実地検証や、農家やオーナーに向けたデモンストレーションを実施。
また、アフリカでファイナンス事業を行う株式会社HAKKI AFRICAとも業務提携。HAKKI AFRICAの運営する少額から融資を行うマイクロファイナンス事業を活用し、農機購入者のファイナンスへのアクセス改善を目指します。
この事業は、商船三井グループの社員提案制度「MOL Incubation Bridge」にて発案し実現し、商船三井全額出資の子会社、KiliMOL株式会社を新たに設立しました。

まとめ:アフリカでビジネスを展開するためには?
今回はJICA Project NINJAの内容紹介から、現在のアフリカのスタートアップの様子や、アフリカに進出する日本企業の取り組みをお伝えしました。
アフリカ進出をご検討中の企業様は、ぜひBE FORWARDまでお問い合わせください。
アフリカをはじめ約53の国と地域を対象にアンケートやグループインタビュー調査を実施できる「マーケットリサーチサービス」、アフリカの企業や個人に向けた「バナー広告サービス」、商品や物資を輸送する「海外輸送サービス」など、幅広いサービスをご用意しております。
参照元:
https://www.jica.go.jp/activities/issues/private_sec/project_ninja/index.html
https://www.jica.go.jp/activities/issues/private_sec/project_ninja/information/ku57pq00002nsr08-att/20210720_01_01_j.pdf
https://lifestoreshealthcare.com/
https://transonicaghana.com/
https://www.mojawallet.com/en
https://www.toyota-tsusho.com/press/detail/210303_004775.html
https://kilimol.net/
https://www.lnews.jp/2021/04/n0427308.html
https://www.mol.co.jp/pr/2021/21091.html