グローバルサウスの一角として、現在、世界全体から見ても急速な人口増と経済成長が進み、国際社会における存在感をじわじわと増しつつあるアフリカ諸国。
特に、南アフリカ、エジプト、ケニア、ナイジェリアといったアフリカの各地域を代表する国は日本との経済関係も年々拡大しているため、日本からの現地駐在、または長期出張という形でアフリカへ渡航するビジネスパーソンの増加が見込まれるでしょう。
また、昨今のアメリカ・イスラエルとイランとの軍事的緊張の高まりや衝突リスクの影響によって、ペルシャ湾岸諸国のみならず、中東全体で貿易の停滞、航空便のキャンセルなど、経済、物流、交通などに深刻な影響が出ています。結果、従来は中東各国に置いた拠点からアフリカビジネスを行なっていた企業もアフリカへの直接進出が進むのではないでしょうか。他にも、海上輸送ルートや資源調達のサプライチェーンについても、アフリカシフトが強まることが予想されます。
そういった背景によって、もしあなたがアフリカへ駐在、または長期出張へ行くことになった場合、アフリカでの生活にはどのような準備が必要でしょうか?この記事では、国別の注意点や家族の帯同の際にチェックするべきポイントや、事前の情報収集において役立つウェブサイト、現地在留邦人のネットワークなどについて解説していきます。
日本人のアフリカ在住の現状
現在アフリカに住んでいる日本人はどれほどいるのか

まず、現状について確認してみましょう。最新の外務省統計(2025年時点)「海外在留邦人数調査統計」によると、アフリカ諸国に滞在している日本人の人数は以下の通りです。
①ビジネス駐在 2800〜3000人
②政府機関、報道関係 1400〜1500人
③国際機関、NGO関係 600〜700人
④その他 約1400人
上記の合計は約6600人となります。ちなみに、世界全体の在留邦人は約130万人で、アフリカに滞在する日本人の割合は約0.5%に過ぎず、現時点では在留邦人が最も少ない大陸です。ただし、近年は比較的高い伸び率で増加している地域でもあります。
どの国に多く滞在しているか?
では、現在アフリカのどの国に日本人が多く滞在しているのでしょうか。同じ統計からベスト3を紹介しましょう。
一位 南アフリカ共和国 (約1000人)
二位 ケニア(約830人)
三位 エジプト(約760人)
背景としては、南アフリカは日本企業のアフリカ拠点数1位で自動車関連などの製造業の進出が盛ん、ケニアは東アフリカ経済のハブとして近年日系スタートアップの進出事例もあり増加傾向、エジプトも自動車部品、衛生用品・化粧品など製造業の現地拠点設立が近年続いているという点があげられます。
あなたがアフリカに長期滞在することになったら
次に、実際にアフリカへ長期滞在するケースを想定してみましょう。この記事では、例としてアフリカの南部、東部、北部、西部を代表する地域大国である南アフリカ、ケニア、エジプト、ナイジェリアの4カ国について、特に居住環境、物価、治安、文化的なギャップといった視点から調査してみました。
【国別徹底比較】居住環境とインフラの「常識」
まず、各国の住宅事情はどのような状況でしょうか。南アフリカ、エジプト、ケニア、ナイジェリアにおける日本人に人気のエリアの住宅費やインフラ、治安状況について深掘りしていきましょう。
アフリカ主要4カ国の日本人居住エリアと月額の生活費目安(単位:万円)
国名 | 主な日本人居住エリア | 家賃(3-4LDK) | 物価・光熱費 | 安全対策費 | 日本人学校の学費(月額) |
| 南アフリカ | ヨハネスブルグ、プレトリア | 20 – 35 | 18 – 30 | 0.4 – 1 | 8.5 – 9 |
| エジプト | カイロ(マアディ等) | 15 – 30 | 11 – 22 | 1 – 3 | 5 – 7 |
| ケニア | ナイロビ(キリマニ等) | 15 – 28 | 14 – 26 | 2 – 5 | 6 – 7 |
| ナイジェリア | ラゴス(ビクトリアアイランド、イコイ) | 40 – 80 | 25 – 45 | 10 – 30 | 24 − 45(日本人学校なし。インターナショナルスクールの学費を記載) |
※1USドル=150円、1南アフリカランド=8.5円、1ケニアシリング=1.1円換算
現地ローカルの物価水準に比べると、家賃や生活費が高額なので驚かれた方も多いかもしれません。しかし、特に都市部において「高額な家賃=インフラと安全を買っている」という点は重要なポイントです。
家賃は、外国人が安心して住めるセキュリティが確保されたマンション(フラット)や一軒家の市場価格となります。なお、ナイジェリア(ラゴス)は世界的に見ても不動産価格が非常に高く、数年分の一括払いを求められるケースも一般的です。
また、南アフリカやナイジェリアでは停電が頻発するため、光熱費にはバックアップ発電機の燃料コストが含まれる場合があります。
駐在経験者が語る「アフリカ生活の壁」と対策
次に、実際に現地への駐在経験を持つ人の声から、現地の生活でどういった点に苦労したか、注意点などをピックアップしてみましょう。

1. 南アフリカ:「停電」と「治安」リスクへの備え
電力インフラが貧弱なため、慢性的な計画停電(ロードシェディング)によって 1日何度も停電に悩まされることでしょう。対策としては、自家発電設備付住宅がおすすめです。また、特にヨハネスブルク等の大都市は治安リスクが高く、警備員がいる駐車場でも車上荒らしに遭う等、日本ではあり得ないリスクがあります。そのため、民間警備会社と契約したり、ドアツードアのタクシー利用のコストを見込んでおく必要があります。
また、家賃支払いは日本では当たり前の自動引き落としではなく、手動の銀行振込が主流となるなど思わぬ不便を強いられることがありそうです。
2. エジプト:ハードな「価格交渉」と「暑さ」対策
まず注目するべきは、価格交渉の激しさです。交渉の文化が強く、特に日本人に対しては強気で主張してくるケースも多いとされているので注意が必要です。
そして、体調を維持するためには5月〜10月の「酷暑期」は最高45℃にも達する暑さ対策、強風時の砂対策を怠ることは許されません。
カイロなどの大都市部では、Uberなどが安価に利用できて便利ですが、慢性的に交通渋滞が激しく、車移動では時間が全く読めないと言われています。可能であれば地下鉄を利用するのが良いでしょう。
また、イスラム教徒が人口の90%を占めるエジプトでは、ラマダン(断食月)などのイスラム教特有の宗教習慣に対する理解と順応が必須です。
3. ケニア:水事情と「ポレポレ(ゆっくり)」文化
国土の80%以上が乾燥地帯にあるケニアは、12月〜3月の大乾期と7月〜9月の小乾期に水不足が深刻化する傾向があります。対策として、個人宅でも貯水タンクに常に水を貯めて断水に備えておきましょう。
また、「ポレポレ(ゆっくり)」文化の影響のためか、行政・事務手続きやビジネスがなかなか進まないことがストレスになるかもしれません。トラブルを避けるためには、余裕を持ったスケジュール設定や、事前に繰り返し確認する、少々の遅れでイライラしないことを心掛けるといった事前の対策が重要になってきます。
治安面では、官公庁やインフラ施設(駅や橋など)の写真を撮るだけで警察にテロの下見と疑われるリスクがあります。また、街中でスマホを取り出すだけでも、強盗やひったくりの標的になったりすることがあるので注意が必要です。
4. ナイジェリア:極端な「不自由」と「物資不足」
ナイジェリアでは、周辺の国々と比べても治安状況が不安定で、かつ、道路などのインフラが整っていないため、エリアによっては徒歩での外出を控えるなどの注意が必要です。安全に行動するには、常に車とドライバーを確保する必要があります。
また、物流の問題により、大手スーパーでも棚の半分が空だったり、賞味期限切れが平然と並んでいたりするリスクもあります。生活物資の備蓄は多めに確保しておきたいところです。
さらに、汚職問題が深刻で、警察官から白昼堂々と賄賂を要求されるケースが報告されています。対応を間違えると逮捕や罰金を取られるリスクもあるため、トラブルを誘発する行動や、治安の良くない場所への滞在はとにかく避けるのが無難でしょう。
日本出国前の準備
アフリカ生活をスムーズに始めるため、出国前にすべきことはたくさんあります。代表的なポイント(健康、事務手続き、物流)についてまとめますのでぜひ参考にしてみてください。
健康、メンタルケア

医療リソースが限られる地域が多く、民間病院は医療費も高額です。そのため、できるだけ「予防」と「自己管理」で健康維持を図りましょう。
ナイジェリア、ケニアは黄熱病感染のリスクがあります。特にナイジェリアでは入国にあたり黄熱予防接種証明書(イエローカード)の提示が必須です。ケニアの場合、日本から直行便での入国ならばイエローカード提示は不要ですが、入国前の経由地や出入国審査官の裁量次第では提示を求められる可能性が常にあります。
他の感染症については、A型・B型肝炎、破傷風、狂犬病、腸チフスの予防接種については、渡航先によらずフルセットの接種が推奨されています。また、マラリアは特に雨季に流行するため、予防薬(メフロキンやマラロンなど)の事前処方と、現地での蚊帳・忌避剤の準備が望ましいでしょう。
もし、虫歯など歯科治療中の場合は、日本出国前に完全に治しておきましょう。現地で高度な歯科治療を受けるのは困難かつ高額だからです。
また、日本から常備薬(抗生物質、解熱鎮痛剤、整腸剤)などを持参する場合は、英文の「薬剤証明書(Prescription)」があると入国時のトラブルを回避できるためおすすめです。
アフリカ駐在がスタートした後は、治安上の理由などで行動範囲が制限され、人によっては孤独感を感じるかもしれません。対策としては、日本の動画配信サービスや電子書籍(Kindle等)を楽しめるよう準備しておきましょう。
その際に忘れてはならないのがVPNです。アフリカのネット環境から日本の銀行アプリ、ストリーミングサイト(Netflix, YouTube等)、SNSにアクセスしようとすると、セキュリティ制限でブロックされる場合があります。
対策としては、出国前にNordVPNやMillenVPNなど、海外利用に適したプロバイダーを2つほど契約しておきましょう。複数を契約するのは、片方が使えない可能性を考慮してバックアップがあると安心だからです。
事務手続き関連

まず渡航に必要なビザですが、昨今の情勢不安により、ビザの発給条件が急に変わることがあります。最新の領事情報を確認してください。
また、1年以上滞在する場合は住民票、マイナンバーカード、年金、健康保険などについて様々な手続きがありますので、代表的なものを以下に紹介します。
1. 住民票、マイナンバー関連の手続き
・海外転出届(住民票の除票)
メリット:住民税の支払義務がなくなる(1月1日時点で日本にいない場合)、国民健康保険料の支払い停止
(注意点)1年以上の海外滞在ならば義務。未提出ならば過料(罰金)が発生する可能性あり
・マイナンバーカードの返納・失効手続き
内容: 海外転出届と同時にマイナンバーカードを「国外転出」仕様に切替える(返納または失効処理)。
2. 社会保険関連の手続き
・国民健康保険の脱退
海外転出届を出したのち、役所で脱退手続きを行う。さもないと保険料がかかり続ける
・年金の手続き
国民年金:海外滞在中の支払いは任意(任意加入)。合算対象期間(カラ期間)として年金受給資格期間にはカウントされるが、受給額を増やしたい場合は任意加入も可能。
厚生年金:海外赴任の場合、会社が手続きすれば継続可能な場合もある(5年以内など)。
3. 税金関連の手続き
・所得税・住民税の準確定申告
1月1日から出国日までの所得について、出発前に確定申告が必要。
・納税管理人の選任
日本に不動産所得があるなど、出国後も日本での納税が必要な場合は、代理人(納税管理人)を立てる必要がある
4. その他手続き
・在留届の提出
3ヶ月以上の海外滞在となる場合、外務省へ「在留届」の提出義務あり。オンライン(ORRネット)で手続き可能。
・銀行口座の「非居住者用口座」への切り替え
日本の銀行は「非居住者」になるとサービスに制限あり。対策としては、三菱UFJの「グローバルダイレクト」など、海外居住者向けのプランがある銀行の利用をお勧めします。
・Wise(ワイズ)の開設
世界170ヶ国以上で利用できる国際送金サービスで、銀行経由より大幅に海外送金手数料を抑えることが可能。日本にいる間に口座開設と本人確認を済ませておく必要があります。
・クレジットカードの予備
VISAとMasterCardを複数枚。アフリカではJCBやAMEXが使えない場所が多いです。
物流:何を、どう送るか

アフリカへの引越しは「紛失・遅延・関税トラブル」がつきものなので、複数の送付方法を利用してリスクを予防しましょう。
・手荷物(預け入れ)
最初の1ヶ月を生き抜くための衣類、薬品、PC、最低限の自炊セットは持参しましょう。
・航空便
2週間〜1ヶ月で届く必要があるものを輸送しましょう。仕事道具、炊飯器、変圧器など。
・船便(数ヶ月)
家具や大量の食料ストックの輸送に有効です。紅海・ホルムズ海峡問題の影響で、現在は通常より大幅に時間がかかる(3〜6ヶ月以上)想定すべきでしょう。
④持っていくべき「お宝」アイテム
・高性能な変圧器
電圧が不安定な地域では、安物だと電化製品が壊れます。
・浄水器
蛇口直結型だけでなく、フィルター交換式のポット型(ブリタ等)が重宝します。
・和食の乾燥食材
味噌、だしパック、乾燥わかめ。これがあるだけでメンタルが安定します。
・大容量モバイルバッテリー
停電が日常茶飯事の地域が多いため、PCも充電できるタイプが必須です。
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役立つ情報源、現地コミュニティ
渡航前に現地の生の情報を得たければ、在留日本人会、日本商工会議所のWebサイトが参考になるでしょう。また、そういった現地日本人ネットワークとの繋がりをあらかじめ作っておけば、渡航後に困ったことがあっても役立つアドバイスや助けを得られるかもしれません。
また、海外赴任全般についての情報収集に当たっては、「海外赴任ナビ」というWEBサイトがビザ取得、海外引越しの段取り等の必要な情報が充実しているので、ブックマークしておくと良いでしょう。
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