競争が激化するグローバル経済において、技術開発や業務処理のアウトソーシングは、組織構造の簡素化、顧客サービスの品質向上、製品開発の迅速化とコスト削減を目指す企業にとって、現在 強力な手段となっています。
今日の海外向けのアウトソーシングの範囲は、一昔前のようなコールセンター業務だけにとどまりません。企業はIT、財務、人事などの機能をアウトソーシングし、コスト削減とコアビジネスへの集中を図っています。
今まではアウトソーシング先といえば、アジア、中南米、中東が中心でした。しかし現在、これらの地域では経済成長と人口の高齢化により労働コストが上昇しており、リモートでコスト効率の高いスタッフを求める企業にとって魅力的ではなくなってきています。
アフリカは、教育を受けた失業者や未就労者を多く抱えており、オフショアスタッフの調達先として台頭しつつあるのです。
今回は、そんなアフリカでのアウトソーシングビジネスに関して触れてみたいと思います。
アウトソーシング先としてアフリカを検討すべき理由
アフリカ国内の人口増加による人的資本の増加。
アフリカは世界で最も平均年齢が若い大陸であり、年齢の中央値は約18歳です。
今後数年のうちにアフリカの人口の大部分が労働力となり、ますます競争が激しくなる労働市場に直面することになります。すでに現在、アフリカの大学卒業生の半数近くが、学歴を生かした仕事を見つけるのに苦労しています。
若い労働年齢層の人口が多いことと、アフリカ大陸内での雇用不足が深刻化していることも相まって、アウトソーシングを検討している企業にとって魅力的な労働者市場が存在するのです。
さらに、この地域の給与水準は世界的にみて競争力があることから、人的資本を必要とする企業にとって、アフリカは理想的な場所になっているのです。
多様な言語に適応可能。
アフリカでは複数の言語が話されています。ガーナ、ナイジェリア、南アフリカ、ボツワナなどでは英語が一般的な第一言語ですが、セネガル、モロッコ、マダガスカルなどはフランス語を話します。モザンビークではポルトガル語を話す人が多くなっています。
その結果、多くのアフリカ人が、世界中の顧客やクライアントとネイティブレベルで容易にコミュニケーションをとることができるのです。
通信インフラの発展。
また、上記であげた地域の通信インフラが発展していることも、オフショア・アウトソーシングの目的地として最適です。さらに、マダガスカルのような多くの国では、高速のインターネットを楽しむことができます。
通信網の急速な発達とテクノロジーへのアクセスの増加は、デジタルワークやリモートワークを可能にする環境をすでに作り出しているのです。
ヨーロッパと時差が少ない。
アフリカとヨーロッパは同じような緯度に位置しているため、アフリカ諸国とヨーロッパ諸国はしばしばタイムゾーンが重なったり、類似したりしています。例えば、南アフリカとイギリスは2時間の時差であり、セネガルとフランスも同じです。
また、顧客企業とアウトソーシング企業の間にもっと大きな差がある場合、フレックスタイム制の導入が進んでいるため、こうした懸念も緩和されています。
アフリカの人々にとってのメリット
アフリカへのアウトソーシングは単なるビジネスではなく、アフリカにとてもメリットのあることです。サブサハラ・アフリカは世界でも最も急速に都市化が進んでいますが、求人倍率はそれに追いついていません。若者の失業や不完全雇用は、ますます深刻な問題となっています。
アフリカに人材を求める国際的な企業はアフリカ大陸に雇用を創出し、アフリカの人が市場性のあるスキルを学ぶことのできる機会を提供します。そうすることで、将来は彼らが自身で生計を立て、家族を養うことが出来るようになることを目指しています。
現地のアウトソーシング企業は、顧客と有能なプロフェッショナルを繋ぐことで、アフリカ大陸の経済成長と民間部門の拡大に貢献しています。
アウトソーシングで心配なのは、創出される雇用が一時的なものに過ぎないという事です。
技術の進歩により、現在アウトソーシングされているような仕事は、将来的にはAIやその他のデジタルイノベーションによって担われるようになるかもしれません。
しかし、これは、アウトソーシングされた仕事が枯渇した後も、大陸とその国民がアウトソーシングから利益を得られないことを意味するものではありません。
適切なマクロ経済政策や社会政策によって、雇用や経済活動の増加を持続可能な長期的成長につなげることが出来るからです。
また、企業がビジネスモデルを転換し、アウトソーシングサービスに従事している従業員を解雇する可能性も常にあります。
アフリカの若手開発者を育成するというビジョンを掲げて設立されたソフトウェア開発会社アンデラは、欧米諸国でのプログラミングブートキャンプの普及により、現地の初級エンジニアが市場に溢れたため、数百人の開発者を手放しました。
さらに最近、同社は実店舗を閉鎖してリモートワークに移行したため、自宅のインターネット接続環境が悪いアフリカのエンジニアの中には、他の国のエンジニアと競争することが困難になっているケースも見られます。
しかし、アンデラ社は、解雇された技術者の多くが、多国籍企業で培った技術や経験を活かして、地元の技術企業に再就職できたという点で、希望的観測を持っています。
このことは、ひいてはアフリカの技術エコシステムに利益をもたらすことになるからです。
アフリカでのアウトソーシングサービス
アフリカでは、
- ウェブサイトやアプリの開発
- コンテンツ制作やライティングサービス
- テープ起こし
- ITサポート
- SEO最適化
- データ入力やデータベース管理
- コールセンターサービス
- データラベリング
など、多くのサービスをアウトソーシングすることが可能です。これらのサービスは、アフリカ大陸内のアウトソーシング会社や、フリーランサーと潜在的なクライアントをつなぐフリーランサーネットワークを通じて成立しています。
アフリカ大陸で提供されるテクノロジー関連のサービスは、専門家による製品設計や管理から、データラベリングのような単純作業まで多岐にわたります。
アフリカはソフトウェア開発の分野で最も急速に成長している大陸であり、マイクロソフトやグーグルなどの大手ハイテク企業がプログラミングコースや指導プログラムを提供しているため、アフリカの技術者層はさらにレベルアップしていくと考えられています。
アフリカ大陸での技術職は、高度なプログラミングスキルを持つ人だけに用意されているわけではありません。
AIは、データのラベル付けや自動運転車の訓練など、多種多様な目的で依然として人間の判断に依存しています。
アフリカ大陸でITインフラの整備が進む中、人間の知覚を必要とするAI支援サービスにとって、アフリカは理想的な目的地となりつつあります。
アフリカでのアウトソーシングの成功例
Code of Africa (ルワンダ、ケニア)
ルワンダとケニアでソフトウェア開発者を育成し、ドイツ、オーストラリア、スイスをはじめとするヨーロッパ市場へアフリカの開発者を派遣する会社です。
Techno Brain Group (ケニア)
ケニアにあるトレーニングセンターでアフリカの人々にITの専門的かつ学術的なトレーニングを提供しています。また、世界中の政府、NGO、民間団体にコンサルティングとアウトソーシングサービスを提供しています。
Tunga (ウガンダ、ナイジェリア、エジプト)
ソフトウェア開発分野での雇用機会が限られている熟練したアフリカ人の雇用を確保するために活動しています。貧困層の人々を対象とし、IT分野での就職を支援しています。現在、ウガンダ、ナイジェリア、エジプト出身のアフリカ人開発者とともに活動しています。
参考:Tunga
Andela (ナイジェリア、エジプト、ウガンダ、ケニア、ルワンダ)
元々、同社は自社の若手ソフトウェアエンジニアを育成していましたが、現在はFacebookと提携し、世界中の個人に市場価値のあるスキルを得る機会を提供する遠隔技術トレーニングを提供しています。
参考:Andela
Software Group (ガーナ、インド、米国、オーストラリア)
金融サービスプロバイダー向けにデジタルバンキングと統合ソリューションを提供しています。ガーナ、インド、米国、オーストラリアなど、さまざまな地域の顧客にサービスを提供しています。
まとめ
COVID-19の大流行でアウトソーシング投資が激減する中、多くの企業が業務縮小を余儀なくされています。
生き残るためにはコスト削減が必要であり、企業は初心に帰って戦略を練り直す必要があるでしょう。
ITやソフトウェア関連のアウトソーシング市場が好調な国がある一方で、アフリカもIT分野で有力な候補として徐々に頭角を現しつつあります。
エチオピアのシリコンバレーであるシェババレーからケニアのシリコンサバンナまで、大陸中に多くの技術拠点が出現しています。
アフリカに技術開発をアウトソーシングすることで、アフリカ大陸でより多くの雇用を生み出すことができ、また企業側としては優秀な技術者や開発者を確保できるというメリットもあります。
アフリカでのアウトソーシングビジネスに興味のある方は、是非、実現可能性の調査ができる弊社の「アフリカマーケットリサーチサービス」にお問い合わせくださいませ。