世界的に農業はビッグビジネスで、経済的に恵まれている大規模農家も存存在します。アフリカにおいて、農業従事者の所得を大きく改善する新しい試みが始まっています。
アフリカ大陸には巨大な国内市場があり、世界の未利用耕作地の60%を所有し、豊富な労働力資源と良好な気候を有しています。それでも、アフリカは毎年300億ドル以上の食料を輸入しています。この問題の大きな要因は、アフリカの食料のほとんどが、いまだに零細農家や農村で生産されていることです。
今回はアフリカのこの歪な状況を改善するための新しい取り組み、「クラウドファーミング」に関してお話ししていきたいと思います。
クラウドファーミングとは?
クラウドファーミングとは、スペインの農家 ガブリエルとゴンザロの2人によって始められた比較的新しいスタイルの農業です。消費されるものだけを栽培し、人々と食材をつなげることを目的としています。
クラウドファーミングの語源は、クラウドファンディングから派生したものです。投資家(クラウドファーマー)がプロジェクトへ資金を提供し、その資金を投資家が興味を持つプロジェクトに投資するというスタイルを採用しています。
投資家はデジタルプラットフォームを通じて投資対象を選ぶことができ、収穫物は投資家の元へ届けられる仕組みとなっています。
このアイデアは、アフリカの農業分野にも導入することができます。融資を受ける代わりに、アフリカの農家は自分の農場を農業ベンチャーに変え、アフリカやアフリカ国外の投資家(クラウドファーマー)がその株主となるのです。
この仕組みは農家の代替資金源となりえると期待されています。
クラウドファーミングのメリット
メリット1:資金確保が容易に
世界的なコロナの蔓延により、多くの農家は莫大な損失を被りました。苦境に立たされた農家たちはクラウファーミングを試みることで、代替資金を得ることができるだけでなく、アフリカの農業のために人々(投資家と農家)が力を合わせることで、アフリカの食糧安全保障を保つことができるとも言えます。
農業に影響を及ぼす気候変動も大きな問題です。クラウドファーミングは、地球を守る考えのもと、土壌を傷めない再生可能な農業を推進する目的を持っており、そのための技術や資金を提供することで持続可能な農業を行える、素晴らしいし仕組みと言えます。
メリット2:食品廃棄物などの無駄を削減できる
また、需給バランスを考え 消費される量だけを栽培するよう慎重に計算されています。その為、食品廃棄物を大幅に削減することができます。
メリット3:複雑なフードサプライチェーンを改善できる
さらには、クラウドファーミングによって、農家から食卓まで直接農作物を届ける事で、無駄なコストを生み出す複雑なフードサプライチェーンを断ち切ることができます。
中間マージンをカット出来れば、農家は生産物の価格変動を気にする必要がなく、同時にエンドユーザー(投資家)の元にも、安定した価格で農産物を届けることが出来るのです。
クラウドファーミングのデメリット
デメリット1:農業スタイルの変更が必要
クラウドファーミングでは、昔ながらの伝統的な農業スタイルを農業経営に転換しなくてはなりません。その為、綿密な事業計画を立て、投資家から投資された資金を適切に管理する必要があります。
その様な管理経営に慣れていない農家はこの部分に苦労する可能性があります。
デメリット2:適切な輸送手段の確保
クラウドファーミングでは迅速で適切な輸送が経営の要になります。作物は新鮮で傷のない状態で消費者へ届けられなくてはなりません。そのために必要な輸送環境を整える事は、エリアによっては難易度の高いものになるでしょう。
デメリット3:デジタルプラットフォームが必須
一般的に農業従事者はデジタルマーケティングやITに関する知識が不足していると言われています。
その為、デジタルプラットフォームの運営は農家にとって困難な作業になる可能性があります。
クラウドファーミングの成功例
クラウドファーミングのアイデアはヨーロッパで生まれましたが、ナイジェリアはEU圏外では突出した成功例と言えるでしょう。
現在、Farmcrowdy, ThriveAgric, Farmkart, Porkmoney, Growcroponline, Growsel, eFarms, Agropartnershipsの8社がクラウドファームの新興デジタルプラットフォームを展開しています。
投資対象は主に、ササゲ、大豆、スイカ、トマト、ピーマン、米、トウモロコシ、牛肉、鶏肉などで大きな成果を上げています。
Farmacrowdyでは3カ国で42万人以上の顧客を抱え、ThriveAgricには25万人以上の農業従事者が参加するなどの成功を収めているのです。
クラウドファーミングの可能性:アフリカの新たなビジネスチャンス
そのため、「土壌を保全・改良し、人と自然が共存するパーマカルチャーなどの再生農業や、農薬や遺伝子組み換え作物を使用しない伝統的な農法に則った有機農業が今後増加する」と投資家の関心を集めています。アフリカの経済成長とともに、農業部門が投資を受けるためには、透明性とデジタル化が重要になります。農業への投資は、国の食料安全保障を確保し、農民の貧困からの脱却のチャンスになり得ます。
クラウドファーミングのようなデジタルプラットフォームを利用することで、農業の最新情報やプロセスの透明性から国内外の投資を呼び込むことが出来るばかりか、同時に気候変動と戦うためのツールにもなり得るのです。
また、農家が農業企業となることで、ホテルやレストランなどのガストロノミー・ビジネスに新鮮な農産物を直接提供でき、多くの中小企業にとってWin-Winの状況を生み出すことができます。現状の農業スタイルでは生産性を重要視する為の農薬問題やクオリティの高い農産物を生産できないなどの問題をクリアできないのです。
まとめ:資金確保問題の解決
クラウドファーミングはアフリカの農家にとって新しいビジネスチャンスであり、ポストコロナにおいて、このアイデアを適用することで、クレジットやローンの悪循環から抜け出す解決策になると考えられます。もしかするとクラウドファーミングでは、農家は利子の返済やローンの返済を心配する必要はないかもしれません。リスクは他の株主と一緒に共有しているので、仮に失敗しても農家は損失が少なく、心配の種も少ないのです。この新しいコンセプトは試してみる価値があると言って間違いありません。
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