21世紀最大のフロンティアと呼ばれるアフリカ。今後見込まれている経済発展のポテンシャルに対し、世界的に大きな注目が集まっています。
しかし、急激に進む人口増や都市化に対し、上下水道、トイレ、ゴミ処理といったインフラ整備の遅れが課題となっています。
逆に言えば、この分野には将来的に大きなビジネスチャンスが眠っているのです。
現地の実情を解説するとともに、現在、中小企業も含め日本企業が取り組んでいる新規ビジネス開拓の実例なども紹介していきます。
21世紀最大のフロンティア アフリカの現状
これまでは貧困、飢餓といったネガティブなイメージで語られることが多かったアフリカで、今後大きな経済成長が期待されているのはなぜでしょうか?
世界銀行によると2024年の世界全体の経済成長率見込みは2.4%ですが、サブサハラ・アフリカの2024年の経済成長率は3.8%、2025年には4.1%と世界平均を上回る見込みです。
なお、このサブサハラ・アフリカという用語はサハラ砂漠より南にあるアフリカ大陸の総称で49の国々から構成されており、面積は全世界の18%を占め、現在の人口は約10億人です。
このような経済的な好調は、この数年だけの一時的な現象ではありません。
実は、サブサハラ・アフリカの経済規模は21世紀が始まってからの20年あまりで4.5倍に拡大しており、今後さらに長期的な成長が持続すると期待されています。
この背景には、21世紀初めから始まった原油高などにより、資源輸出の収益が高まったことが大きいです。
また、数多くのアフリカ諸国が独立した1960年代から3世代ほど時間が進み、主要国の政治がようやく安定してきたことも要因に挙げられるでしょう。
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経済成長を後押しする民間需要はどこから?5つの地域の今とこれから
さらに、最近のアフリカ諸国でよく見られるのが、最新技術が一気に普及する「リープフロッグ(蛙飛び)現象です。
例えばケニアでは、携帯電話のSMS機能を用いたモバイル送金・決済サービス「M-PESA」が世界で初めて実用化されました。
このサービスによって、銀行口座を持っていない人が多い同国でも、携帯電話さえあれば出稼ぎ労働者が遠方に住む家族への送金や、給与受け取り、公共料金支払いなどを利用できるようになりました。
その結果、M-PESAはすでに国民の70%以上に普及し、総取引額はGDPの50%を超えるケニアにとって不可欠な金融インフラとなっています。
アフリカ全体の傾向として、このようなリープフロッグ現象が起きやすい背景には、国民の平均年齢が若く新しい技術やトレンドへの対応力が高いことが挙げられるでしょう。
もちろん現在も社会インフラの未整備や物価高などの課題を抱えてはいますが、このような要因が重なり、現在のアフリカ経済は好調を維持しているのです。
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「人口ボーナス」による高度成長期が来るか?

では、これからのアフリカ経済がさらに発展すると期待されている理由はなぜでしょうか。
最も大きな理由は、今後アフリカが享受する人口ボーナスによるものです。
人口ボーナスとは、子供と高齢者に比べ、労働力人口が多い状態のことを意味する経済学用語で、労働者による消費の拡大や1人当たりの社会保障負担の低さが成長を後押しします。
さらに、マイホーム購入や子育てを行う若者人口の増加により、社会全体の消費が活性化して経済成長が促進されるという効果も期待されています。
現在、サブサハラ・アフリカ諸国の人口増のペースは世界最速を記録しています。
2022年の人口11億5,000万人が、2050年には2倍近い20億9,000万人に達すると予想されているのです。
2022年の国別人口ランキングでトップ10に入ったアフリカの国はナイジェリアのみでしたが、2050年にはナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピアの3国がトップ10入りすると予想されています。
一方、昨年まで世界一の人口を誇った中国では、人口ボーナスの期間はほぼ終わり、今後は緩やかな人口減と急激に進む高齢化が見込まれています。
先進国の人口もアメリカを除きほぼ横ばいか減少が見込まれており、長期的にはこれから人口ボーナス期を迎えるアフリカ諸国の経済的な影響力が高まることは間違いないでしょう。
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急激な都市化により、公衆衛生の改善が急務
また、人口増と並行して進む大きなトレンドが急速な都市化です。
2014年に国連が発表した”World Urbanization Prospects”によると、サブサハラ・アフリカの都市人口は2010年の35.4%から2050年には54.8%に達すると予想されています。
このように都市化が進む最大の要因は、現在アフリカ各国の経済が好調で、雇用を求めて数多くの人が都市に移り住んでいることが挙げられます。
都市に人口が集中し、経済発展を享受することによって、生活インフラの改善や教育、文化、医療などのサービス産業が集まります。
その結果、快適で便利な都市の生活や、経済的なチャンスを求めてますます人口が増えるという好循環が生まれると期待されているのです。
また、アフリカ大陸はアメリカ合衆国、インド、中国、EUを全て足したよりも広大です。
今後ますます人口増が予想されるアフリカで、社会インフラ、教育、医療などを効率的に配分するためには都市化を進めることが不可欠となってくると言えるでしょう。
都市化は経済発展や消費市場拡大といった大きなチャンスです。
しかし、急激な都市化は、貧困や、教育、病院、電力や水道といった社会インフラの不足と公衆衛生の悪化に繋がりかねません。
今後のアフリカの発展は、人口が増え続ける都市の貧困とスラム化を防ぎながら、いかに社会インフラの整備を進め、人々の生活水準を改善できるかにかかっていると言えます。
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SDGsが掲げる目標「安全な水とトイレを世界中に」

現在、国連が推進している「持続可能な達成目標」(SDGs)の中にも、このようなアフリカの諸課題を改善するための項目が含まれています。
特に、「目標6 安全な水とトイレを世界中に」は、アフリカの急激な都市化と人口増により深刻化する課題への対応策として注目すべき取り組みと言えます。
この取り組みに関連し、2022年3月に西アフリカのセネガルで開催された「第9回世界水フォーラム」では、ユニセフ(国連児童基金)とWHO(世界保健機関)の合同のプロジェクトにより以下の内容が報告されました。
報告によると、現在、アフリカ大陸では基本的なレベルの飲料水を得られない人が4億1,100万人、基本的なトイレを利用できない人が7億7,900万人(そのうち2億800万人は野外排泄をしている)、基本的な手洗い設備を利用できていない人が8億3,900万人も存在しています。
前途多難な状況ではありますが、それだけに将来的なポテンシャルは大きく、社会課題の解決に向けた革新的なイノベーションやビジネスモデルに対する期待は大きいと言えます。
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日本企業による新ビジネス開拓
ここからは、日本企業がアフリカの上下水道、トイレといった公衆衛生の課題の解決に向けて現在取り組んでいるビジネス開拓の実例を紹介します。
水供給ビジネス
日本ポリグル株式会社は、納豆のネバネバ成分であるポリグルタミン酸の働きによって、わずか1グラムで10リットルの水を浄化する性能を持つ水質浄化剤「PGα21Ca」を世界約80カ国で販売しています。
ポリグルの行っているビジネスモデルは、わずか5日間でタンクを設置し、浄化剤の使い方を習得した現地スタッフが管理することにより、費用と時間をかけずに安全な水を継続的に供給するというものです。
用いられる浄水タンクや、スタッフはすべて現地生産、現地雇用で賄われており、日本から供給する浄化剤も途上国相手のビジネスとして成立させるため、水1000リットルあたり約1ドルという価格を実現しました。
さらに、浄化されたきれいな水を現地住民自らが販売する仕組みを構築することによって、アフリカの貧困層の所得向上や女性の社会進出へも貢献しているのです。
トイレビジネス
大分市に本社を置く株式会社ミカサは、JICA支援事業として2017年にアフリカ中部のカメルーン共和国の首都・ヤウンデ市内とヤウンデ第一大学に、水も下水道環境も不要なバイオトイレ「バイオミカレット®」を16基設置しました。
バイオトイレは微生物によって排泄物の分解・蒸発処理をするため、汚水を外に流すことがなく、川や海の水を汚さないというメリットがあります。
それまで同国のトイレ事情は、240万人が居住する首都ヤウンデ市でも公衆トイレは汲み取り式が7箇所のみで、一般家庭では、ほとんどが地面に掘った穴をトイレにしており、当然、下水道環境などもほとんど整備されていません。
本事例は地方の中小企業による小規模な試みですが、環境に優しいバイオトイレの普及は、下水道インフラが乏しいアフリカの公衆衛生の改善に貢献する素晴らしい可能性を秘めていると言えるでしょう。
ゴミ処理、リサイクルビジネス
北海道帯広にある廃棄物リサイクル業の有限会社タナベでは、2020年よりJICAと連携し、エチオピアの首都アジスアベバで、紙や木、廃プラスチックなどの産業廃棄物を圧縮して作られる代替燃料「RPF」の事業化へ向けた調査を行っています。
この代替燃料「RPF」は石炭と同等の熱量があり、さらに有害物質や二酸化炭素の排出も減らせる優れた燃料です。
RPFの現地生産を軌道に乗せることにより、エチオピアにおける廃棄物活用と高騰する輸入燃料の購入を減らすという一石二鳥が期待できるのです。
すでにエチオピア政府・アジスアベバ市とも覚書を交わしており、今後は分別回収されたゴミを原料にRPF製造のパイロット事業を立ち上げようとしています。
また、世界的な肥料の高騰に対して、帯広市の別の廃棄物リサイクル会社とも協力し、分別されたゴミからの堆肥を生産する構想も進めています。
アフリカへビジネス進出するためには?
今回は、アフリカの成長を背景とした人口増や都市化、アフリカの公衆衛生ビジネスの実例をお伝えしました。
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参照元:
THE WORLD BANK
JETRO(サブサハラ経済成長率)
ELEMINIST
NEC business leaders square wisdom
三井住友DSアセットマネジメント
JETRO(サブサハラ人口)
JETRO(世界人口予測)