アフリカビジネスは大きな成長の余地があり、「最後のフロンティア」とも呼ばれています。
しかし、アフリカへの進出を検討する際に、多くの方が心配するのが治安です。
実際に、アフリカの国々の中に、治安がとても悪い国があることは間違いありません。
一方で、治安の良し悪しは地域間で大きな差があり、治安が良い地域では多くの日本人も活動しています。治安にきちんと備えることで、アフリカでのビジネスチャンスをつかめるのです。
この記事では、アフリカ諸国の治安状況を詳しく紹介します。EUから支援を受けているENACTによるデータを元に、アフリカの国々の治安ランキングを紹介します。
アフリカビジネスを成功させるために、治安に関して注意すべきポイント3選も解説します。
「アフリカビジネスへの進出に興味があるが、治安が悪そうで一歩を踏み出せない…」
とお悩みの方、ぜひこの記事を最後までご覧ください!
なぜアフリカは治安が悪いと言われるのか
アフリカは治安の悪い国が多いとよく言われます。
治安が悪いと言われる理由について、下の4点を詳しく見ていきましょう。
・政治的に不安定で、テロやクーデターなどが起きやすいから
・組織的な犯罪が他の地域と比べて多いから
・スリやひったくりの類の犯罪は、アフリカに限らず多い
・「治安が悪いからビジネスチャンスはない」は間違い
1.テロやクーデターなどの危険性があるから
テロやクーデターが起こりやすいことが、治安が悪くなる理由の一つです。
アフリカでは、政治的に安定していない国が多くあります。
そうした国では、国民を巻き込むようなテロやクーデターが起こるリスクが高いです。
特に政権交代時には政治的な緊張が高まり、暴力行為を伴うようなテロやクーデターが増えます。
経済平和研究所(IEP)の報告によると、2006〜22年の間に、中東・北アフリカ地域では年平均3,200件ほどテロ事件が発生しました。また、アフリカのサハラ以南地域でも1年あたり2,200件のテロが記録されています。
ちなみに日本も属するアジア・太平洋地域では、年間に290件ほどのテロが起こりました。
テロやクーデターが発生すると、現地のビジネス活動が止まったり、予期しない損害が生じるおそれが大きいです。
たとえば、2011年にアフリカ北部から中東にかけて「アラブの春」と呼ばれる民主化運動が起きました。エジプトでも大規模な反政府運動が発生し、海外からの観光客は1,400万人以上(2020年)から940万人ほど(2021年)に激減しました。観光業をはじめとして、当時のエジプト経済が大きなダメージを受けたことが分かります。
2.組織的な犯罪が多いから
アフリカでは、組織的な犯罪が多く発生しており、アフリカでの治安の悪化に結びついています。
組織犯罪では多くのメンバーで役割分担をしながら、人身売買や金融犯罪、武器の密売などが一般的に行われています。またこうした犯罪組織は、国境を越えて活動しています。そのため摘発も難しく、組織犯罪の撲滅には至っていません。
アフリカでビジネスを営むにあたりこうした組織犯罪に巻き込まれてしまうと、
・取引する製品を奪い取られてしまう
・従業員が被害を受け、スタッフを確保できなくなる
などの被害が生じるリスクがあります。
3.スリ・ひったくりのような犯罪はアフリカに限らず多い
「治安が悪い」「犯罪が多い」と聞くと、スリやひったくりのような犯罪を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、観光客やビジネスパーソンが遭遇するようなスリ・ひったくりは、アフリカに限らず世界中で発生しています。こうした犯罪が多いから、アフリカで治安が悪いと言われているわけではありません。適切な対策や心がけによって、これらの犯罪にあうリスクは軽減できます。
4.治安が悪い=ビジネスに向かない、は間違い
治安が悪いとされている国はビジネスができないと思われがちです。
しかし、そうではありません。むしろ、危険とされる国にもビジネスチャンスは存在します。
東南アジアでは、インドネシアやフィリピンは危険度が高い国とされています。
外務省も海外危険情報を出し、注意を促したり不要不急の渡航を控えるように告知しています(2024年8月7日現在)。
しかし、インドネシアやフィリピンへのビジネス進出は活発です。
インドネシアには200以上、フィリピンにも100を超える日本企業が、現地に拠点を設けてビジネス進出をしています。
アフリカでも、治安が悪く危険情報が出ている国は多くあります。そうした国でも、アフリカビジネスへ進出することはできるのです。
たとえば南アフリカは、中心都市ヨハネスブルグの一部など、治安が非常に悪い地域がある国として知られています。
一方でビジネスは非常に活発で、アフリカ南部の経済を牽引しつづけています。アフリカで最も多くの資産を持っている国としても有名です。
治安が悪いとされる国であっても、適切な調査と準備によって、ビジネスの成功が見込めます。
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アフリカ治安ランキングを紹介!アフリカビジネス進出のリスクを把握しよう
【2024年最新】アフリカ治安ランキング
2023年にENACTが公表したデータをもとに、アフリカ諸国における犯罪スコアランキングを以下に紹介します。犯罪スコアの高い国では、組織的な犯罪が多いことを示しています。
順位 | 国名 | 犯罪スコア | 実質GDP (10億米ドル) |
1 | コンゴ民主共和国 | 7.35 | 52.4 |
2 | ナイジェリア | 7.28 | 535.3 |
3 | 南アフリカ | 7.18 | 360.7 |
4 | ケニア | 7.02 | 94.8 |
5 | リビア | 6.93 | 55.5 |
6 | 中央アフリカ | 6.75 | 2.0 |
7 | ウガンダ | 6.55 | 44.1 |
8 | スーダン | 6.37 | 79.0 |
9 | 南スーダン | 6.32 | |
10 | カメルーン | 6.27 | 40.2 |
11 | モザンビーク | 6.20 | 19.5 |
11 | タンザニア | 6.20 | 67.2 |
13 | ソマリア | 6.13 | 9.0 |
14 | コートジボワール | 6.02 | 68.4 |
15 | マリ | 5.93 | 16.9 |
16 | ブルキナファソ | 5.92 | 16.6 |
17 | ガーナ | 5.80 | 68.0 |
18 | ニジェール | 5.70 | 14.3 |
19 | エチオピア | 5.68 | 105.8 |
20 | アンゴラ | 5.58 | 84.9 |
20 | マダガスカル | 5.58 | 13.4 |
22 | セネガル | 5.52 | 25.4 |
23 | チャド | 5.50 | 10.5 |
23 | リベリア | 5.50 | 3.4 |
25 | ジンバブエ | 5.47 | 22.0 |
26 | ベナン | 5.32 | 16.8 |
27 | トーゴ | 5.23 | 7.9 |
28 | ギニアビサウ | 5.10 | 1.3 |
29 | エジプト | 5.05 | 453.8 |
30 | シエラレオネ | 4.95 | 5.4 |
31 | アルジェリア | 4.88 | 179.6 |
32 | ブルンジ | 4.87 | 3.4 |
33 | ガボン | 4.85 | 15.9 |
34 | モロッコ | 4.80 | 125.5 |
35 | コンゴ共和国 | 4.78 | 10.2 |
36 | ザンビア | 4.73 | 26.2 |
37 | ジブチ | 4.65 | 3.3 |
38 | ギニア | 4.58 | 13.8 |
39 | ガンビア | 4.53 | 1.8 |
40 | マラウイ | 4.48 | 11.3 |
41 | チュニジア | 4.45 | 48.1 |
42 | 赤道ギニア | 4.38 | 10.0 |
42 | エスワティニ | 4.38 | 4.8 |
44 | モーリタニア | 4.38 | 7.7 |
45 | モーリシャス | 4.37 | 13.3 |
46 | ボツワナ | 4.35 | 17.5 |
47 | ナミビア | 4.30 | 11.5 |
48 | カーボベルデ | 4.28 | 2.1 |
49 | エリトリア | 3.97 | |
50 | レソト | 3.92 | 2.2 |
51 | コモロ | 3.92 | 1.1 |
52 | セーシェル | 3.90 | 1.7 |
53 | ルワンダ | 3.60 | 13.0 |
54 | サントメ・プリンシペ | 1.70 | 0.3 |
実質GDPは2022年の数値。南スーダンとエリトリアは実質GDPのデータがないため空欄。
ただし、犯罪指数が高い国だからといって、ビジネスができないというわけではありません。
犯罪指数が高い国でも、首都や中心都市などは治安が保たれていることが多いです。国の中がどこもまったく同じように危険とは限りません。
また、経済が発展している最中では、犯罪指数は高くなってしまう場合があります。金融犯罪や密売などは、経済規模がある程度大きな国でなければ成り立ちません。
アフリカビジネスで重要なのは「進出したい国はリスクが高そうなので、より念入りに準備をしよう」という心づもりです。
アフリカで治安が良い国・悪い国3選をピックアップして紹介
ランキングをもとに、経済規模が大きいアフリカの国で、治安が良い国と悪い国をそれぞれ紹介します。
犯罪スコアが低い国1. エジプト
エジプトは経済規模が大きく取引も活発な国の一つです。
そうした国の中では、組織犯罪指数が低めとなっています。
しかし、人身売買や武器密輸の事例は報告されており、大きな問題となっています。
エジプトは大きな経済成長を遂げている国で、アフリカ北部をリードする存在と言えます。
一方で、近年はロシア・ウクライナの影響を受け激しいインフレも起こるなど、足元の経済情勢は不安定です。
潜在的には大きなビジネスチャンスがありますが、念入りな情報収集が必要です。
犯罪スコアが低い国2. アルジェリア
アルジェリアも経済が発展しており、かつ組織犯罪のスコアが低い国と言えます。
政府は治安を維持する取り組みに力を入れており、中心部の治安は少しずつ改善する方向に向かっているようです。
一方で、イスラム武装勢力によるテロの危険性は依然として残っており、現地での行動には気をつける必要があります。
アルジェリアは石油の産出を中心として経済を発展させてきました。
すでにエネルギー産業やインフラ分野では、いくつかの日本企業も進出しています。
今後は、消費者向け商品などへの需要が高まることも見込まれ、ビジネスの機会が増えていきそうです。
犯罪スコアが低い国3. モロッコ
モロッコも経済が安定して発展しており、日系企業も数多く進出している国の一つです。
組織犯罪はエジプトやアルジェリア以上に低い水準であると言えます。
モロッコでは、タバコや医薬品を中心に、偽造品の取引が大きな問題となっています。
偽造品による健康被害や経済的損害が懸念されています。
モロッコ税務当局によれば、2023年には202万個を超える偽造品を押収したとのことです。2022年と比べると、10%以上も押収点数が増えています。
また、近年の治安は安定しているようですが、人が集まる施設でのテロにも気をつけるよう呼びかけられています。
こうした点に注意すれば、モロッコはアフリカビジネスに向けて魅力的な国の一つです。
犯罪スコアが高い国1. ナイジェリア
アフリカにおいて、トップクラスに組織犯罪スコアが高いのがナイジェリアです。
一方で、アフリカで最も人口も多く、潜在的なビジネスチャンスが大きい国といえます。
さまざまな形態の組織犯罪が対策すべき課題であり、誘拐や人身売買、武器・薬物などの密輸が多く発生していると報告されています。
また、政治的対立に伴いテロ活動も活発化しており、直近で見るとリスクがとても高い状況です。
多様な組織犯罪とテロの活発化が、ナイジェリアの治安を悪化させている理由です。
一方で、多くの人口を有することから潜在的な市場規模は大きく、これからも経済が発展していく見込みの高い国です。
モバイル端末の利用者が急速に増えており、JumiaやKongaなどEC(電子商取引)における売上額も増加の一途をたどっています。
日本からもカシオや久光製薬、ダイキン工業など多くの企業が進出しており、今後の経済発展に期待できます。
犯罪スコアが高い国2. 南アフリカ
「危険な国」「アフリカで経済発展している国」といった両面のイメージを強く持たれているのが南アフリカでしょう。
組織犯罪指数のランキングではナイジェリアに続く3位となりました。武器や麻薬の密売、デジタル詐欺などの金融犯罪を中心に対策が必要とされています。
特に武器や麻薬などの密売が、都市中心部における治安が極めて悪くなっている理由であると考えられます。
経済成長はめざましく、アフリカ南部で大きく発展している国です。
アフリカでもっとも多くの金融資産を有しているとも言われ、海外からも多くの企業が進出しています。
ただし最近は物価高や電力不足に直面しているとも報じられており、ビジネス進出の際には念入りなリサーチが必要です。
犯罪スコアが高い国3. ケニア
ケニアはナイジェリアや南アフリカと比べるとやや組織犯罪スコアは低いです。
それでも、アフリカの中では組織犯罪が多い国であり、対策が必要とされている地域とされています。
誘拐や人身売買、武器・偽造品・薬物の密輸などが特に問題となっています。
治安面では大きな課題を抱えているケニアですが、経済成長は進んでおり、アフリカビジネスのチャンスに恵まれた国です。
通信ネットワークの拡大を背景に、モバイル端末から決済・金融サービスが利用できるM-PESAが普及しています。JumiaグループやKilimallをはじめとしたEC取引も好調です。
アフリカ東部地域の経済・物流の中心的存在として、今後も発展が期待できます。
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アフリカビジネスにおける治安をめぐる注意点3選
アフリカにおける治安状況を知ったうえで、アフリカビジネスへ進出する際に気をつけるべき点を3つ解説していきましょう。
・治安情勢をきちんと調べる
・現地の危険性にあわせて下準備をする
・現地の人たちとビジネスに向けたつながりを作る
1.現地の治安情勢についてしっかり調査する
アフリカビジネスを成功させるためには、現地の治安情勢を詳しく調べておきましょう。
調査すべき内容として、たとえば
・テロやクーデターの有無
・組織的な犯罪が発生する地域や頻度
・組織犯罪の具体的な事例
などがあげられます。
これらの情報を集めるうえで、現地のニュースは重要な情報源です。
外務省「海外危険情報」やJETRO「ビジネス短信」でも、その国の治安の様子を知ることができます。
2.現地のリスクにあわせた準備をする
アフリカビジネスのために進出する国や地域によって、リスクに対応するための準備が求められます。
日本のような危険度の低い国であれば、離れた地域に出かける際もさほど準備は必要ないでしょう。
しかし治安が悪く危険な国ではそうはいきません。
まず、危険性の高い地域をあらかじめ調べ、できる限り立ち入らないようにします。
どうしても非常に危険な地域に行かなければならない場合は、たとえば次のような準備が必要です。
・徒歩移動は絶対にせず、タクシーなど信頼できる交通手段を準備する
・護衛スタッフを現地で探して確保する
3.現地の人たちとのつながりを作る
アフリカビジネスを円滑に進めるためには、現地で信頼できるパートナーを見つけることが重要です。
現地のパートナーと協力することで、次のような利点があります。
・現地の法律や手続きにスムーズに対応できる
・文化や国民性に合った商品・サービスを提供できる
・現地のニュースをすばやく入手できる
人的ネットワークを活用しリスクを軽減できれば、アフリカビジネス成功への道を切り開けます。
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参照元:
Barlaman Today “2 Mln Counterfeit Goods Seized in Morocco in 2023”
ENACT ”Organized crime index in Africa in 2023”
Institute of Economics & Peace ”Global Terrorism Index 2023”
JETRO 「ビジネス短信」
JETRO「2023年度|ジェトロ海外ビジネス調査 日本企業の海外事業展開に関する
アンケート調査」
外務省「海外安全ホームページ 危険情報」
世界銀行 Databank