21世紀のフロンティアと呼ばれるアフリカですが、日本企業はどれほど進出しているのでしょうか。
本記事では、最新の国別進出状況と、これからアフリカ進出を検討する際に拠点として注目すべき5ヶ国を紹介します。
また、日本企業の進出事例の紹介を通じて、現在で支持されるビジネスモデルや市場開拓の方法などについても説明します。
1.日本企業の国別進出状況と注目すべき国々
アフリカにおける最新の日本企業の進出状況について、2022年度の外務省の統計(海外進出日系企業拠点数調査)の結果をご紹介します。
アフリカ全体として日系企業の拠点数は現在972ヶ所ですが、これは中国(3万社以上)、アメリカ合衆国(8600社以上)、インド(4900社以上)など、他の国々と比べるとまだまだ少ないと言えそうです。
国別ではどのような状況でしょうか。
アフリカ各国の中で最も日系企業の進出数が多い国は、南アフリカ共和国の266社、次いでケニアの114社、モロッコの70社となり、ガーナ、エジプト、ナイジェリア、タンザニアといった国々が50社前後で続きます。
地理的に大変大きなアフリカ大陸でのビジネスを成功させるためには、効率的な物流ネットワークを構築するために各地域の中でハブとなる国へ進出することが重要です。
条件としては、人口やGDPが大きく経済的に比較的に発展していること、民主主義体制に基づき、政情や投資環境が比較的安定していること、外国投資を積極的に受け入れていることなどが挙げられるでしょう。
そのような観点からアフリカ各国を比較した時に、進出先の候補として有望な国を、各地域から五ヶ国紹介します。

エジプト
エジプトは、一億人以上の人口を抱える北アフリカ一の大国であり、最新の2023年の統計では、GDPが南アフリカ、ナイジェリアを抜いてアフリカ一となりました。同国の一人当たりGDPは4000ドルを超えており、イスラエルの隣国としてガザ地区における戦争、IMFからの債務増といったリスク要因はあるものの好調な経済を維持しています。
南アフリカ共和国
アフリカ南部では、現在すでに日系企業の進出数がアフリカ1の南アフリカ共和国が挙げられます。最新の2023年の統計で一人当たりGDPは6000ドルを越え、ヨハネスブルグなどの大都市部はさらに発展が進んでいます。アパルトヘイト時代の影響で貧富の差が大きいなどの問題は残っていますが、アフリカ南部では随一の経済大国であり、地域全体を見据えた拠点としても重要なポイントを維持するでしょう。
ナイジェリア
アフリカ西部では、アフリカ最大の人口大国、資源大国であるナイジェリアがハブとして有望です。現在も二億人以上の人口を抱える同国は、国連の推計によると長期的には四億人以上、世界的にもトップスリーの人口大国へ成長すると見られています。GDPの大部分を原油収入に頼っているため、原油価格の変動が経済を直撃するリスクはありますが、消費市場としての将来的なポテンシャルは大きいと言えるでしょう。
ケニア
アフリカ東部のケニアは、上記3ヶ国と比べると人口やGDPの規模は小さいものの重要な役割を果たしています。首都ナイロビはエチオピア、タンザニア、ルワンダといった東アフリカ各国をつなぐ物流網のハブとして急成長し、全人口の70%以上に普及したモバイルマネーM- PESAといったIT基盤も強く、今後も東アフリカの中心として発展が期待できそうです。
ルワンダ
最後に紹介するのは、中央アフリカのルワンダです。1990年代には悲惨な内戦と民族虐殺を経験した同国ですが、現政権のカガメ大統領の元で政情が安定し、アフリカ1と言われる治安の良さを実現しました。また、現時点では一人当たりGDPは1000ドル程度ですが、IT立国を目指すという国策に沿って急速な経済成長を遂げていることからアフリカの奇跡と呼ばれており、将来有望な投資先として注目を集めています。
2.アフリカ市場で成功した日本企業の事例、ビジネスモデル紹介
次に、現在アフリカ各国へ進出し、ビジネスを成功させている日本企業の事例をご紹介します。各社が培ってきたビジネスモデルやマーケティング手法は新規参入の検討に当たってもきっと参考になるのではないでしょうか。
トヨタ自動車・豊田通商(アフリカ市場向け自動車の生産・販売)
トヨタ自動車のアフリカ進出の歴史は1959年まで遡ります。早くも1962年からは南アフリカ共和国で現地生産を開始し、現在では現地会社への生産委託を含めると、南アフリカ、ケニア、エジプト、ガーナで新車を生産しており、南アフリカでの販売台数ではトップシェアを誇ります。なお、アフリカで最も売れているトヨタ車は、悪路に強く人も物も載せることができるオフロード系のハイラックスです。
トヨタ自動車のアフリカ事業において忘れてはならないのが、グループ会社の豊田通商の役割です。同社は現在アフリカ54ヶ国で事業を展開し、現地生産、販売、物流、自動車部品の製造といった自動車事業のあらゆる面でサポートを行っています。
また、トヨタブランドだけでなく日野自動車、スズキといった他ブランドの販売も手がけており、2022年には日本企業として初めてアフリカ事業の売上が1兆円を越えました。
また、豊田通商では、アフリカの交通インフラの未整備や、移動サービス事業の未発達などの問題を新しい技術やサービスで解決することを目指し、現地のモビリティ関連スタートアップ企業への出資・融資に特化した投資会社、Mobility 54 S.A.S.を設立しました。
同社はコートジボワールで交通系ICカード、アプリサービスを運営するMoja Rideへ出資し、新たな事業開発を支援しています。詳細は過去の記事もご覧ください。
「日本が支援する、アフリカ現地スタートアップのビジネス事例」
ダイキン工業(空調機のサブスクビジネス)
空調機器のトップメーカーであるダイキン工業では、タンザニアにおいてエアコンのサブスクビジネスともいうべきユニークな取り組みを行っています。
ダイキン工業が販売するインバータエアコンは省エネ性能が高いものの、ライバル製品と比べて高い価格によって販売が伸び悩んでいました。一方、タンザニアの顧客には高い電気代でせっかく購入したエアコンを満足に使えない、また、製品故障時の修理業者がおらず故障品が放置されがちといった問題がありました。
このような課題に対し、ダイキン工業は現地提携先(タンザニアの電子サービス企業WASSHA株式会社)と協力し、エアコン使用時間に応じて使用量を課金するサブスクビジネスを開始します。この方法により、顧客は他社よりも価格が高いダイキン製のエアコンを初期費用を抑えて導入でき、省エネ性能が高く電気料金を抑えられるインバータエアコンの持つメリットを享受できるというわけです。
さらに現地提携先の製品のメンテナンス網を整備し、故障時に24時間以内に修理対応できるサービス体制を整えました。修理代金はサブスク料金から賄われる仕組みです。
支払いは携帯電話回線を用いたモバイルマネーにて行われ、支払いが滞った場合は遠隔操作によってエアコンの稼働をロックする仕組みも構築されています。
この事例からは、高価格であっても高品質の日本製品をいかにアフリカなどの新興国でマーケティングするかについて、数多くのヒントがあるのではないでしょうか。
なお、ダイキン工業の事例については、過去のこちらの記事でも紹介していますので、ぜひ合わせてお読みください。
「アフリカのサブスクリプションサービス事情」
味の素(うまみ調味料の小分け販売)
西アフリカの食文化へ順応し、現地の消費者に長年支持されているのが、味の素株式会社が展開するうま味調味料のビジネスです。

サトウキビを原料としたうま味調味料「味の素」を世界中で展開する味の素株式会社は、1991年にナイジェリアのラゴス市にWASCO社(West African Seasonings Co. Ltd.)を現地企業と合弁で設立し、西アフリカ市場への進出を本格化させます。
現地での営業活動は、ナイジェリア国内にきめ細かい流通網を整備の上で、すでに東南アジアで成功した小分けパッケージを1コイン価格(ナイジェリア:5ナイラ≒約1.5円)で現金販売という形で行われています。この流通網と価格設定により、誰もが、いつでも、どこでも買える仕組みを実現しました。
また、このうま味調味料を離乳後の子供向け栄養補助食品としても販売し、経済的に貧しいアフリカの子供達の発育改善にも貢献しています。これは日本では想定されていなかった用途ですが、うま味調味料はアミノ酸なので偏りがちな栄養を補う効果が期待されているのです。
近年では、ナイジェリアなど西アフリカ諸国で伝統的に使われてきた豆類を原料とした発酵調味料であるダダワを元に開発した「DeliDawa」を発売し、より深くアフリカ市場へ食い込んでいます。
ユニ・チャーム(紙おむつ、生理用品)
アフリカの急速な人口増加と女性の社会参加が進む状況をビジネスチャンスと捉えて事業展開しているのが、紙おむつ、生理用品といった日用衛生用品メーカー、ユニ・チャームです。
同社は2000年代にサウジアラビアへ進出し、2010年代に中東・北アフリカ地域の第二拠点としてエジプトへの進出を果たしました。
エジプトに進出した理由は二つあります。一つ目は、同国には過去から欧米メーカーも進出しているため優秀な技術者が多く、製造拠点として優れていたためです。もう一つの理由は、エジプトは中東・北アフリカ地域のFTA である GAFTA(大アラブ自由貿易地域)と、アフリカ東南部の FTA である COMESA(東南部アフリカ市場共同体)FTA の双方に加盟する地域のハブで、エジプトを起点としてアフリカ各国への展開を見据えたためです。
2023年にはケニアへの展開も開始したユニ・チャームの生理用品ですが、従来から進出先の各国の事情に合った価格設定や、ばら売りなどの販売方法によって着実にシェアを伸ばしており、今後さらなる販売増が期待されます。
サラヤ(アルコール手指消毒剤)
大阪に本社を置く老舗の石鹸、衛生用品メーカーであるサラヤ株式会社は、2011年よりアフリカ進出を開始しました。現在はウガンダに製造拠点を設置し、アルコール手指消毒剤の製造販売を行っています。
また、同社はウガンダにて、日本ユニセフと協力により、2010年から「100万人の手洗いプロジェクト」を継続し、同国の衛生状況を改善するとともに、一般家庭での手洗い・消毒の習慣を普及させてきました。
このような努力によって、今では現地の人がアルコール消毒液のことを『サラヤ』と呼ぶほど、サラヤブランドを浸透させることに成功しています。
カネカ(人工毛髪)
お洒落に敏感なアフリカ女性のハートをガッチリと掴んでいるのが、化学素材を中心に幅広く事業を展開する株式会社カネカです。

一般に、一人当たりGDPが3000ドル程度まで上がってきた国や都市では、身だしなみやお洒落を楽しめる人口も増えており、美容アイテムや整髪料、香水などの新たな市場が生まれると言われています。これは、現在のアフリカでは、ラゴス(ナイジェリア最大都市)、ナイロビ(ケニア首都)などが当てはまります。
特にアフリカの女性はヘアスタイルに大変こだわりを持っており、例えばケニアのナイロビにおいては、すでに普通の会社員の女性が月々に髪の美容にかける費用が5000〜1万円にも達しているとも言われています。
※アフリカの美容・ヘアケアの最新事情については、こちらの記事でもご紹介しています。合わせてご覧ください。
「タンザニア・ケニアの女性に聞いてみた!「ヘアケア」事情」
「アフリカの美容トレンド事情|最新髪ケア、ファッション、肌ケアトレンド」
こういった状況のもとで、アフリカの女性に強く支持されているのが、カネカが販売するウイッグ・エクステンション用人工頭髪「カネカロン」です。カネカロンが優れているところは、まず人毛の性質とよく似ていて使いやすく、中韓の競合メーカー製品と比べても高品質という点、もう一つは難燃性が高く安全という点です。
カネカロンは、現在アフリカの人工頭髪の市場シェアで60%以上を占めており、21世紀に入ってからのアフリカ諸国の経済発展と人口増により、現在も需要が急増しています。カネカでは現在の高シェアを維持するため、現地でテレビCMやミスコンテストを主催し、現地のトレンドの把握や販売チャネル強化のため現地駐在スタッフを置くなど積極的なマーケティングを行なっています。
トロムソ(籾殻燃料製造装置)
広島県に本社を置く株式会社トロムソでは、稲作で発生する大量の籾殻を原料に固形バイオ燃料「モミガライト」を製造する装置「グラインドミル」を、稲作が広く行われているマダガスカル、タンザニア、ナイジェリア、セネガル等へ販売しています。
モミガライトの原料は100%もみ殻で、燃やしても新たな炭素を発生させないカーボンオフセット効果があるだけではなく、石油・石炭と異なり燃焼させても排ガスに硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)を含まずクリーンです。
さらに、今まで廃棄されていた籾殻を有効活用することにより、化石燃料の購入量を削減し、エネルギー自給率を向上するだけでなく、モミガライトの普及によって今まで行われていた燃料用の植生の伐採を抑えられるため、森林保護へのメリットもあります。
現在は原油高騰の影響で価格が上がった既存の化学肥料を代替できる籾殻を原料としたバイオ炭肥料の製造装置を開発にも取り組んでおり、サステナブルな農業と環境保護への貢献というビジネスモデルの推進に今後ますます期待が高まっていると言えるのではないでしょうか。
ビィ・フォアード (中古車輸出販売)
弊社ビィ・フォアード も、越境EC(電子商取引(EC:E-Commerce)において、国境を越えて取引を行う)にて、独自のプラットフォームを用いて中古自動車・自動車部品の輸出販売を行っています。
アフリカ地域56の国と地域、アフリカ現地パートナー93店舗、既存顧客約360万人と、アフリカを主要な販売先として事業を展開しています。
日本から遠く離れたアフリカに商品をお届けするには、輸送や通関、言語といった課題があり、時間と手間がかかります。そこで、船会社や現地エージェントと協力し合い、現地港からお客様の元まで商品を直接届ける手段を開拓し、配送網を整備しました。
越境ECにおいては、お客様にとって便利なサービスであることを大切に考え、多言語対応や、通関や配送までを含めた上で料金がいくらなのかすぐに確認できるようサイト開発しています。
現地でのプロモーション活動も積極的に行っています。タンザニアで毎年開催されるアフリカ最大級の商業祭「サバサバ」への出展や、ビィ・フォアード主催の現地キャンペーンも複数実施しており、2024年9月にもジンバブエでのイベントを予定しています。
中古車輸出販売で培ったアフリカでの知名度と幅広いネットワークを活用し、現在は、海外販売代行(BE FORWARD Marketplace)、海外輸送サービス (ポチロジ)といった事業等も展開しています。
その他、今後の展望として、左ハンドル国の開拓による三国間貿易の拡大、モンゴルでのオートローン事業の開設、現在アフリカを中心に進めている不動産仲介サイト「リアルエステート」の展開なども計画しています。
関連記事:
越境EC売上高ランキング国内No.1!越境ECで成功をおさめたビジネスモデルを解説
1.~前編~(越境ECでの商品選び、販売数や在庫管理、投資について)
2.~後編~(輸送手段の開拓、現地でのマーケティング、越境ECから派生したビジネス展開)
・アフリカビジネスを切り拓く!越境ECサイトによる中古車輸出販売、BE FORWARDのビジネス事例
まとめ:アフリカビジネスの検討を進めるには
今回はアフリカ各国における日本企業の進出状況、地域別の注目国の紹介と、すでに現地で成功を収めている日本企業のビジネス事例について紹介しました。
アフリカへのビジネス進出のお考えの際には、現地調査が必要です。株式会社BE FORWARDの運営する「マーケットリサーチサービス」では、アフリカをはじめ約53の国と地域のユーザーを対象に、オンラインアンケート調査やグループインタビュー調査を実施しています。
その他、アフリカの企業や個人にリーチする「バナー広告サービス」、商品や物資の輸送には「海外輸送サービス(ポチロジ)」など、幅広い内容でアフリカへのビジネス進出をサポートします。ご興味を持たれるものがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。