「アフリカ人と、仕事をする」―グローバル化やインバウンドの盛り上がりを受け、多国籍な人材を有する日本企業も増えてきたが、アフリカ人と協働で行うビジネスについて語れる人間は、まだそれほど多くはないだろう。
アフリカビジネスにおけるビィ・フォアードの強みを語る上で不可欠なのが現地パートナー、そして本社採用の外国人社員だ。弊社は現在アフリカに42の公式エージェントと196の拠点を持ち、300人を超える現地スタッフが通関やデリバリーなどの物流業務や販売サポートを行っている。さらに調布本社では社員全体の約3分の1を外国人スタッフが占め、新興国から来たフロンティア精神溢れる優秀な社員たちが、日々新しい市場を開拓している。
アフリカと日本のビジネス習慣は大きく異なるが、弊社では10年を超えるアフリカ経験の中で大小さまざまな問題に日々対応し、ひとつひとつその差を乗り越えてきた。今回はそんなビィ・フォアード流の人材戦略について説明したい。
1.アフリカビジネスは、信頼できる現地パートナーの開拓がカギ
1-1.“アフリカビジネスは、アフリカ人に任せる”~現地パートナーが欠かせない理由
アフリカでビジネスを展開する際、頻繁に起こるクーデターやテロ、内戦に巻き込まれることも珍しくはない。そして、貿易ビジネスにおいて最もよく見られるのは汚職の蔓延と突然の法改正だ。
特定の品物に対してある日突然法律が変わる。輸入するための関税が引き上げられたり、新たな検査が必要になったりする。そうなると、その検査を担当したい企業が世界中から押し寄せてきて賄賂が飛び交う。これが一通り落ち着いたところでまた違う品物の法律を変える…これが政府高官の裏ビジネスの実情である。
こういった体質が経済成長を阻んでいることは、現地のアフリカ人たちも理解しているが、今すぐ変わるものではないのが残念ながら現実だ。
急な法改正が起こった時、即座に
「正しい現状把握ができる情報網を持てるか」
「現地のお客様が納得行くような説明ができるか」
といった問題解決力が試される。この10年で何度もこうしたトラブルに対処してきた結果、「いかに信頼できる現地パートナーと提携するかということが成功のカギになる」という結論に行き着いた。現地でのトラブルは、その土地の習慣をよく知る人の手を借りて解決するのが一番なのである。
1-2.公式エージェントの役割と、意欲に溢れた“勝手にビィ・フォアード”
ビィ・フォアードがアフリカで認定した42の公式エージェントは、通関業務をはじめ、車の販売サポートや、内陸国への配達「シティデリバリーサービス」まで幅広い業務を担っている。また、彼らは新しい商品やサービスの販売促進イベントを行ったり、マーケティング面での積極的な提案もしている。こうすることで現地エージェントはより多くのビジネスチャンスを得ることができ、弊社としてもビィ・フォアードの看板を立てた実店舗を現地に構えることができるという大きなメリットがあるのだ。
アフリカはまだネット環境が不安定であり、ネットショッピングの経験がないお客様も多い。そんな中、実店舗があれば、スタッフと一緒にパソコンの画面を操作し、アドバイスをもらいながら安心して購入することができる。また、公式エージェントに送金を代行してもらえば、煩雑な作業を要する国際送金のハードルもぐっと下がるという訳だ。
ビィ・フォアードの公式エージェントは、たくさんのオファーの中から厳格に審査を行い選ばれる。アフリカの港に何千台と並ぶビィ・フォアードのロゴ入りステッカー車を見た現地の業者から「ぜひ通関業務をやらせてくれ、一緒に仕事がしたい」とオファーが殺到するのだ。
一方で公式エージェントとして認定されていない現地の中古車屋が、勝手にビィ・フォアードの看板を立て、ノベルティであるロゴ入りTシャツを着て、まるで正規の代理店のように振る舞うケースも多々見られる(弊社では“勝手にビィ・フォアード”と呼んでいる)。
しかし、偽サイトや偽請求書といった事態にでもならない限りは、そんな彼らも自主性を持って積極的に拡販をしてくれるパートナーとして大目に見ることにしている。なぜならば、中には公式エージェント以上の働きをしてくれる会社が出てくることもあるからだ。
こういった意欲にあふれた様々な現地アフリカ人の自発性と多大なる協力が、ビィ・フォアードのアフリカビジネスを支えている。
2.仕事の“見える化”と“ルール化”で、日本流の経営をもう一度世界へ
2-1.仕事の“見える化”で、アフリカビジネスは大きく飛躍できる
意欲にあふれたパートナーを見つけたならば、次は「彼らとどう仕事をするか?」という問題が待っている。ビジネス習慣という点でアフリカは、詳細な確認やクオリティを要求する日本とは最も違う文化圏と言っても過言ではない。だからこそ弊社は日本の“当たり前”のサービス品質を当たり前に提供したことで成功したのだが、そんなアフリカ人パートナーとのビジネス習慣の違いを乗り越えるため、すべての仕事を「見える化」した。
弊社では公式エージェントとの間で、販売から通関業務、デリバリーまでの全ての行程をオンライン上に入力し管理するシステムを導入している。お客様とのメールのやり取りや入金状況、商品は今どこまで到達しているのかといった細かい行程まで全てがシステムによって「見える化」されているのだ。
これをいち中古車輸出企業が開発するには大掛かりな開発費を要したが、東京から現地の状況をリアルタイムに確認することができる上に、メールも全て社内で共有されているので、担当者が不在の際にも代わりの人が対応することができるなど、結果的にサービスの向上につながっている。
このような仕事の進め方を現地スタッフたちも、
「明瞭でわかりやすい」
「ミスが減るので安心して仕事ができる」
と好意的に受け止めている。またこういった日本流の仕事のやり方を学ぶことはアフリカ国内でも優秀な人材として成長できる大きなチャンスと捉えているようだ。
2-2.何事も“ルール化”することで日本流の仕事術を徹底
高度経済成長時代にはもてはやされた日本流の経営も、失われた20年以降はその負の側面に焦点が当たることが多い。昨今では欧米型の経営手法がお手本とされているケースがほとんどだが、本来日本流の仕事のやり方は「真摯にルールを守る姿勢」や「懇切丁寧に仕上げる」など、美点も多い。弊社ではこの日本のビジネス文化とサービスで世界に打って出ている。
例えば書類管理一つとっても、どこに仕分け、次のステップが来たらどうする、といった細かいステータスをルール化する。そして、ルールは現地スタッフに頭ごなしに押し付けないようにする。「この方がミスもないしスムーズに気持ちよく進む」ということさえ腑に落ちれば、彼らはとても素直で協力的に受け入れてくれるからだ。慣れてくれば自発的に「こういった方法は取れないか」といった提案までしてくれることもある。
3.アフリカをはじめとした新興国の優秀な人材と共に、“前へ”
3-1.社員の約3分の1が外国人~世界中から人材が集まる“調布のシリコンバレー”
ビィ・フォアードの本社は東京の調布にある。活気あふれるオフィスには国際色豊かなスタッフが集まっており、さながら“調布のシリコンバレー“とも呼べる雰囲気だ。それもそのはず、現在全社員213名のうち外国人は62名と約3分の1を占めており、出身国は30カ国に渡るのだ。一人で数カ国語の言語を話す社員もおり、対応言語は30言語に上る。
社内の共通言語は英語だが、日本語を話す外国人スタッフも多い。また、英語にまだまだ慣れない社員には毎朝外部講師を呼んで英会話レッスンも行っており、やる気さえあれば、学べる環境を提供している。
社員は国籍も年齢もキャリアもバラバラだが、共通していることは、
「人並み外れたポジティブシンキング」
「行動を伴った決断力」
「たった一つでも突き抜けたスキル」
「文化や国籍の違いにも怯まない強い意志」
このどれかを持ち合わせているという点である。これは新興国というフロンティアを開拓していくために重要な要素なのだ。
3-2.「まあ、やってみようよ」~全ての人に活躍の場を与え、自発性を尊重する
外国人社員は2009年から採用を始め、2012年以降は業務の大幅な拡大に伴い急激に増えている。しかし、その採用基準は語学力だけでは決してない。あくまでも日本人と同じく、能力と人物重視で採用している。
彼らの多くはそれぞれの国で名門大学を卒業し、日本に留学してきたいわばエリートである。先進国の企業で働いて成長し、いつか母国に帰って貢献したいという強い志を持った人材が多いにも関わらず、アフリカや新興国出身というだけで日本では単純労働以外の就職先は狭き門であるのが実情だ。しかし、ビィ・フォアードではそんな彼らにも等しく活躍の場を提供している。
これまで数台しか売れなかったモンゴルの市場を、数百台まで伸ばしたモンゴル人リーダーや、半年でバハマ市場の売上を10倍にした社員まで、外国人スタッフの活躍は目覚ましい。また現地タンザニアでも、雇われ運転手からキャリアをスタートさせ、その働きぶりから営業として抜擢され、今ではマネージャーにまで昇進した公式エージェントのスタッフもいる。
常に新しい可能性を提案し、挑戦しようとする人材に「まあ、やってみようよ」の精神で前向きにチャレンジする機会を与える。新興国の優秀な人材と共に、我々は常に“前へ”進み続けるのだ。