火曜日, 5月 13, 2025

フィンテックが促進するアフリカの越境ECとスタートアップの発展

アフリカ大陸ではフィンテック(FinTech)が急速に普及し始めています。フィンテックとは、FinanceとTechnologyを組み合わせた造語で、金融サービスと情報技術を組み合わせることで生まれた革新的なサービスや事業領域などを指します。特にデジタル決済の普及は、アフリカにおけるマーケットプレイスの拡大や越境EC (電子商取引) の発展を促進する重要な要因となっています。

この記事は、アフリカ大陸の消費者・企業に向けてどのようなフィンテックサービスが普及してきたか、そしてそれが今後のアフリカでのビジネス及び越境ECにどのような好影響を与えるかについて解説します。

アフリカの消費者向けフィンテック事情

銀行サービスへのアクセス率が低い

アフリカでは、多くの人々が銀行口座を持たずにいることから、先進国で普及している貯金・送金・電子決済・ローン・与信といった一般的な金融サービスにアクセスできない状況が続いています。

2021年時点では、アフリカ大陸人口のうち57%が銀行口座を保有していません。(Unlocking Financial Inclusion: Banking the Unbanked in Africa) これは、日本における銀行口座普及率が90%を超えていることを踏まえると、かなり少ない数字です。

貧困や不便さが要因です。具体的には、口座開設費用や手続きの書類を準備できないことが問題です。また、村から銀行のある大きな街に移動するには、時間とお金がかかってしまいます。バイク、バス、タクシーなどに1〜2時間乗る費用を考えると、一定以上の金額を貯金する必要がない限り、口座開設に踏み切る理由は少ないでしょう。

しかし銀行口座を持てないことにより、

  • 出稼ぎで稼いだお金を家族の元にすぐ届けられない
  • モノを買うときに現金での現地決済以外の手段を持つことができない

といった生活に関わる問題も生じてしまうのです。

金融サービスへの入り口はモバイルマネー

上述のような問題は、M-Pesaをはじめとしたモバイルマネーサービスが解決しています。モバイルマネーとは、携帯やスマホ端末を介した金銭のやりとりを可能にするサービスです。

M-Pesa、Tigo、Airtelなど、アフリカには様々なブランドが普及しており、これらのサービスは以下の利便性を備えています。

  • 電話番号と国民IDといった情報さえ揃えれば、5分程度でサービスを利用開始できる
  • 小さな村の商店でも金額のチャージが可能である
  • 電話番号さえ知っていれば、知人に送金したり、モノ・サービスを購買する時の支払いに使用できる

このサービスは、PaypayやLINE payといったスマートフォンを使った日本国内のサービスとは異なり、電波が弱い地域におけるフィーチャーフォン(ガラケー)での利用を前提としたUXになっていることも特徴です。
アフリカでは携帯電話普及率がまだまだ低く、2025年におけるユニークユーザー数が全体の50%程度と見込まれている現状です。 スマートフォンを購入する一歩前の段階として、まだまだガラケーを購入する人が多く存在するのです。
また、アフリカの小さな町や村で生活していると急に電波が弱くなることがありますが、そのような場合でも利用できるよう設計されているからこそ普及したサービスともいえます。

そしてモバイルマネーサービスは、個人間の送金のみならず越境ECやマーケットプレイスにおける決済もサポートし始めています。
例えば、M-PesaはGlobal Payという仮想VISAカードの提供を開始しています。これまでクレジットカードやデビットカードを持っていなかった人々にとって、これは朗報です。M-Pesaユーザーは、銀行口座を持たずともAmazonやeBayといったマーケットプレイスにてモノを購入できるようになりました。

その他のアフリカ内外のECサイトも、モバイルマネー決済をサポートする決済ゲートウェイを導入することにより、より多くの消費者が決済をしやすい環境を整えています。モバイルマネーサービスが入口となり、デジタル金融から隔絶されていた消費者がモノ・サービスを越境ECで購入する頻度が増えることとなりそうです。

●関連記事:サハラ以南アフリカの携帯電話ユーザー数とスマホ普及率:アフリカで進むデジタル化の今

アフリカの企業向けフィンテック事情

国ごとに異なる決済手段や規制要件がビジネスの障壁となっている

アフリカでは、2021年時点でアフリカ大陸人口のうち57%が銀行口座を保有していないため、オンラインでモノを売りたいアフリカ内外の企業にとって大きな障壁となっています。

従来の越境ECサイトやマーケットプレイスでは主にクレジットカードやデビットカードによる決済が主流です。アフリカに進出したいグローバル企業や、アフリカ大陸内で販売チャネルを拡大したい企業にとって、現金やモバイルマネーを主に使用するアフリカの消費者との取引ができないとなると大きな損失となります。

また、アフリカ出身の企業であっても、自国外でのビジネスを行うにあたっては、各国の規制要件に合わせていくのにも大きなコストがかかります。

加えて、支払いを受け取る際にも課題があります。例えば、国外の銀行口座を持たないと、一部の越境ECでの支払いを受け取ることができなかったり、たとえ受け取ることができたとしてもアフリカの銀行口座への着金が遅くなることがあります。

これにより運転資金の確保が難しくなり、結果として事業の成長を妨げる要因となってしまいます。

アフリカ事情に合わせた決済インフラ登場で、ビジネスしやすい環境に

Flutterwaveの公式サイトより

このような課題を解決する決済ゲートウェイサービスが、アフリカから生まれています。

ナイジェリアの企業であるFlutterwaveは、アフリカ内外の企業が顧客からの支払いを受け取ったり、他の顧客に送金したりするときに役立つ決済APIを提供しています。

FlutterwaveのAPIを自社ECサイトやアプリ等に統合することで、M-PesaやTigo、 Airtelといった主要なモバイルマネーによる顧客の支払いを受け取ることが可能になります。アフリカ各国の決済手段や規制要件の違いに対応しているといった利点もあります。2024年1月時点で、毎日50万件の取引と100万以上の顧客を抱える注目のフィンテックスタートアップ企業です。(Customers – Flutterwave

例えば、タクシー配車アプリのUberはFlutterwaveを決済APIとして使用し、ナイジェリア・ウガンダ・ケニア・タンザニア等の国々にて事業を展開しています。これによりUberの乗客はカードやモバイルマネーでの決済が可能になり、またUberドライバーも同様の手段で収入を得ることができています。

また、同社はAmazonやeBayといった米国発の越境ECにおける、アフリカ企業のビジネスをサポートしています。仮想の米国口座をFlutterwave上で作成することで、越境ECでの売上金を簡単に受け取れることが可能になります。これは、市場規模の大きい国外に販売チャネルを持ちたいアフリカ企業にとって、大変便利な機能です。アクセス数が多い越境ECやマーケットプレイスに販売チャネルを設けることで、集客コストを抑えて事業を成長させるチャンスを得ることができます。(Africa to the World: Your Flutterwave Account can now be used to collect your earnings from Amazon, Ebay, Shopify, etc.

●関連記事:西アフリカのユニコーンスタートアップ|高評価額の企業3社(フィンテック、人材、モバイルマネー)

Flutterwave以外にも、アフリカビジネスにおける障壁を取り除くことに強みを持つ決済ゲートウェイサービスが複数あります。例えば、同じくナイジェリア発のPaystackは様々な決済手段をサポートするAPIを提供していて、2020年に米国のフィンテック企業であるStripeにより2億ドルで買収されたことで話題となりました。

今後も類似スタートアップ企業が競合することで、決済関連の課題がさらに解消され、アフリカ市場への進出がよりしやすくなると想定されます。

フィンテックが越境ECやマーケットプレイスに与える影響

携帯電話普及率に比例したモバイルマネー利用率の上昇、及びアフリカ各国の分断された決済事情をサポートする決済APIの登場により、

  • アフリカの消費者による越境ECやマーケットプレイスにおける消費活動が促進される
  • 日系企業やグローバル企業がアフリカ市場に参入しやすくなる

といったことが今後想定されます。

こういったアフリカビジネス環境の変化を踏まえた上で、自社ビジネスのアフリカ展開の検討にご興味をお持ちであれば、「マーケットリサーチサービス」をぜひご利用ください。ケニア・タンザニアを中心としたオンラインアンケートやグループインタビュー、現地の店頭訪問など、アフリカビジネス進出を後押しする市場調査サービスを実施しております。

その他、ビィ・フォアードでは中古車輸出販売事業で培った実績とネットワークを生かし、弊社プラットフォーム上で代理掲載販売を行う「BE FORWARD Marketplace」、アフリカの企業や個人にリーチする「バナー広告サービス」、商品や物資の輸送に「海外輸送サービス(ポチロジ)」などのサービスをご用意しております。

お客様のニーズに合わせて、アフリカへのビジネス進出を成功に導くサポートをします。
ご相談は随時、無料で受け付けております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

アフリカビジネス事務局
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BE FORWARDは、中古自動車の輸出販売をメインに、アフリカに関するビジネスを幅広く展開しています。 月間販売台数15,000台、アフリカをはじめ世界207の国・地域で商取引を行うグローバルカンパニーです。 越境ECサイトとしては、月間6,000万PV、ネット通販売上高ランキング国内第1位(2023年)。 創業20年、つねに前へとアフリカでのビジネスを切り拓いてきました。その経験と実績をもとに、アフリカビジネス進出を検討する上で役に立つ、アフリカ現地の最新情報をお届けします。

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