誰もが当たり前のようにインターネットに接続し、ワンクリックで買い物できる現在。
AMAZON、楽天市場、メルカリなどのECショッピングモールは、すでに私たちの生活には欠かせないインフラとなっています。
また、国境を越えたモノやサービスの取引、つまり「越境EC」も活発に行われており、先進国のみならず新興国も含め、世界中で越境ECのシェアは加速度的に増え続けています。
「円安をチャンスに海外市場へ進出したい」、「人口減少が始まる国内市場に依存したくない」といった理由で、越境ECを検討しているビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。
まず、現在なぜ越境ECビジネスへの注目が高まっているか、その理由についてまとめてみましょう。
越境ECが注目されている理由とは
1.全世界的な越境ECの急拡大
全世界における越境ECビジネスの市場規模は、現在驚異的なスピードで成長しています。
経済産業省が発表した「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」による全世界の越境ECビジネスの市場規模は、2021年時点で7,850億USドルでした。さらに、9年後の2030年には実に10倍以上の7兆9,380億USドルへ拡大すると予測されています。
一体なぜ、これほど急速に市場拡大が進んでいるのでしょうか?
中国・アメリカが成長を牽引
最大の理由は、最大の規模を持つ中国とアメリカにおいて今後も高い伸びが継続すると見込まれているからです。
特に中国の伸び率は高く、前述の「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」では2022年推計値の1,653億ドルが24年には1,824億ドルへ達すると見込まれています。
新興国における急速な普及
中国だけでなく、インド、東南アジア、中東、アフリカ諸国といった新興国で経済成長が加速し、購買力を持った人口が増えています。
さらに、携帯電話の普及によってインターネット接続人口も急速に増加し、若い世代を中心に越境ECの認知度が高まっています。
彼らにとっての越境ECの魅力とはどういうものでしょうか?
まず、越境ECによって自国では手に入りづらい商品や自国では高価な商品をリーズナブルに購入できる、また、外国メーカーから正規品を直接購入できるという点です。
銀行口座・クレジットカードを持つ人口が少ない新興国においても、例えばケニアにおけるMーPESAのような誰でも利用しやすいオンライン決済の普及が急速に進んでいます。
最後に、特に新興国では物流レベルの向上によって越境 ECを利用できる人口が増えるという効果も見込まれています。
2.円安による輸出競争力アップ
また、日本特有のローカルな事情ではありますが、昨今急激に進んだ円安は、結果的に日本製品の輸出競争力を高める効果があります。
もう一つ、円安の影響も相まって増加している訪日外国人観光客によって、これまで知られていなかった日本製品の魅力がより広く認知されるようになった点も見逃せません。具体的には化粧品や食品、電子機器、ファッションアイテムなどが、インバウンド需要と並行して越境ECという形でも需要を伸ばしています。
越境ECのメリット・デメリット
次に、越境ECビジネスの具体的なメリット・デメリットについて解説していきましょう。
まずメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
<越境ECのメリット>
海外展開のコスト削減、スピードアップ
越境ECビジネスの最大の特徴の一つは、現地に実店舗やスタッフを持たずにビジネスをスタートできる、という点です。ただし、ECショッピングモールへ支払う販売手数料、または掲載順位を高めるための広告費用などは発生します。
また、国際的に広く展開するECショッピングモールを通じて、同時に複数の国、地域へ展開することが可能になります。
この結果、従来よりも海外展開にかかるコストの大幅な削減と、従来よりもスピーディなビジネス展開が可能になりました。
商圏拡大
もしあなたのビジネスが現在、国内市場のみ、または対面販売のみといった限定された商圏の中で行われているならば、越境ECへの参入によってより多くのユーザーへ自社の商品を販売できる機会が広がります。
前掲の「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」によれば、2022年の日本から両国へ向けた越境EC輸出額(推計値)は、中国向けが2兆2569億円(前年比5.6%増)、アメリカ向けが1兆3056億円(前年比6.8%増)に達しています。
さらに、全世界的に越境ECビジネスは今後も急速な市場拡大が期待されていますので、早期に参入し、ノウハウと経験値を蓄える価値があると言えるでしょう。
国による支援(JETRO等)
越境ECは現在世界的に急成長中のビジネスですが、実は日本では言語の問題やIT化の遅れといった理由により、まだまだ参入が進んでいないのが実情です。
そのため、JETRO(独立行政法人 日本貿易振興機構)、中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)などの公的機関により様々な支援サービスが行われています。
海外展開やECビジネスに対する経験が少ない場合は、こういった支援サービスを利用することで貴重なアドバイスを得たり、円滑な立ち上げが可能になるでしょう。
<越境ECのデメリット>
それでは次に、越境ECビジネスが抱えるデメリット(課題)についても考えてみましょう。
物流コスト、商品の破損、品質劣化
購入者の宛先によっては物流コストや日数を要する場合があり、販売価格に影響します。また、新興国など物流事情が悪い地域の場合は商品の破損、品質劣化によるクレームが発生する恐れもあります。
市場調査の難しさ
越境ECの場合は、現地の店舗や人的リソースがない状態でスタートするケースも多いので、進出すべき国、地域の検討や、現地の市場調査に失敗した場合、予定した販売が達成できないというリスクがあります。
法規制、税制等の違い
日本国内では適法な商品でも、販売先の国の法規制で違法とされる可能性があります。また、国によって食品や化粧品といった特定カテゴリーの商品を販売するための認証取得を事前に求められることもあります。
他にも、商標権の侵害・食品の安全基準などもトラブルの恐れがあるため、問題ないか事前によく確認しておきましょう。
越境ECの始め方
それでは、具体的に越境ECビジネスを立ち上げるためにはどのようなステップを踏む必要があるか、順を追って説明していきます。
市場調査(商品、ターゲット国、販路など)
第一ステップは市場調査です。
ターゲットとする国でどういった商品が販売を見込めそうか、販売チャネルは現地のECショッピングモールを活用するか、自社サイトを構築するかなどの検討がこの段階で行われます。
その他にも、以下のようなポイントも事前に確認し、必要に応じて対応しておかねばなりません。
- 法規制などの確認(輸出可否、必要な認証の取得)
- 配送方法、リードタイム等の確認
- 決済条件の確認
販売の仕組み構築
第二ステップでは、第一ステップでまとめた方針を踏まえて、越境ECの仕組みを構築していきます。具体的にどういった作業が必要となるか、代表的な項目をまとめます。
- 売り場を作る(ECショッピングモールに出店または自社サイト構築)
- 商品・価格・ロット単位等を決める
- 現地の言語で商品紹介ページを作成する
- 物流体制(配送方法、在庫など)を構築する
- 広告・マーケティング活動を準備する
- 返品・アフターサービス条件等を決める
販売、顧客対応
実際に販売がスタートした後は、通常の対面販売や国内ECと共通したマーケティング、広告活動、顧客対応などが主になってきます。
具体的には以下のような業務が考えられるでしょう。特に越境ECの場合は海外顧客が相手なので、コミュニケーション等をいかに上手く行えるかが鍵となるでしょう。
- マーケティング活動の効果検証、改善
- クレーム対応、トラブルシューティング
- 顧客レビューのフィードバック(商品改善、新商品の展開)
- SNS・インフルエンサーの活用
相談、支援サービスの紹介
ここまで、越境ECビジネスの将来性や、具体的にビジネスを立ち上げるまでの一連の流れについて説明してきました。最後に、商品分野別のより詳細な情報や、実例に基づいた具体的なアドバイスを得られる相談窓口を紹介します。
JETRO JAPAN MALL事業
JETRO JAPAN MALL事業は、ジェトロが持つネットワークを活用し、世界18カ国60以上のECサイトのバイヤーに商品を紹介し、海外ECサイトによる買取販売を目指す事業で、越境ECのエントリーモデルに位置付けられています。
原則、国内納品・国内買取・円建て決済で取引できるため、複雑な輸出手続きが不要となり、さらに、ジェトロと現地のECサイトが連携してプロモーションを実施してくれるというメリットもあります。
東京都中小企業振興公社による越境EC出品支援事業
東京都内の、越境ECを利用した海外販路開拓を目指す中小企業に対しては、東京都中小企業振興公社による支援事業が実施されています。
複数の海外ECモール内に開設した公社特設サイト(Tokyomall)へ、約一年間出品でき、サイト運営、商品発送、決済処理のサポートを受けられます。また、期間中のプロモーション支援や専任ナビゲーターによるサポートも利用可能です。
株式会社ビィ・フォアードによるアフリカ進出サポート
最後に紹介するのが、アフリカを中心に世界200以上の国への中古車輸出実績を持ち、越境EC売上高ランキング国内No.1を誇る株式会社ビィ・フォアードです。
同社では、日本企業によるアフリカ進出サポートの実績も多数あり、具体的には現地オフィス網・顧客ネットワークを活用した市場調査、月間6000万PV超を誇る越境ECサイトの活用、独自の物流ネットワークを利用した配送サービスなど、アフリカにおける越境ECビジネス立ち上げに向けた多様なサポートが可能です。
お問い合わせは随時無料で受け付けております。越境ECやアフリカビジネス進出にご興味をお持ちであれば、ぜひお気軽にご相談ください。
参照元:
経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」
JETRO 越境EC・海外ビジネス情報
中小機構 民間パートナー活用支援(Eコマース活用)