アフリカビジネスの最前線を社員の視点から語るインタビューシリーズ・第3回。
前回まではアフリカの商慣習や彼らの消費行動について、現場の最前線の声を伝えてきたが、今回はアフリカというラストフロンティアを10年かけて開拓してきたビィ・フォアード代表の山川が、日本企業にとってのこれからのアフリカビジネスの商機を解説する。
―プロフィール紹介― 山川 博功(やまかわ ひろのり) 鹿児島県生まれ。明治大学卒業。93年、東京日産自動車販売に入社し、優秀新人営業賞受賞。97年、カーワイズに入社。3ヶ月後には社内トップセールスに。99年、ワイズ山川を設立。04年、中古自動車輸出部門を分社化、株式会社ビィ・フォアードを設立。
1.ラストフロンティアが、本当にいま必要としているもの
―ラストフロンティアと呼ばれるアフリカですが、日本企業が参入する商機はどの辺りにありますか?
山川 博功(以下:山川):まず大前提となるのは、安価でなおかつ壊れにくい品質が求められているとういことですね。例えば携帯電話なら、写真が高画質だったり、スタイリッシュで軽い何万円もする新品を買うかといったら、買わない。電話とインターネットができて、それが安く手に入ればそれで十分です。
メイドインジャパン商品で、必要以上の高級感や付加価値が付いたものは多いです。でも欲しくないものを押し付けても買うはずがありませんよね。一方で、100円ショップでも高品質で壊れない時計などが流通しているのは、日本だけだと思います。どんな安い商品だって手を抜かない。それは日本企業の大きな強みです。
―アフリカでは中古品市場の方が参入しやすいのでしょうか?
山川:実際のところ、中国の新品の洗濯機の方が日本の中古品よりも安い、というのが現実です。でも、例外もあります。
例えばコピー機です。日本には減価償却という税法の文化がありますから、5年も経てば資産価値はゼロになって、あとは費用をかけて処分しなければならないですよね。でも、アフリカの人々にとってはまだまだ使える製品なんです。そういった商材はすごく狙い目ですね。また、工作機械なども同様にレベルが高い分野です。
2.日本企業と中国企業の違い―スピードと積極性が無ければ、アフリカ市場で勝てない
―処分するしかなかったコピー機や工作機械がビジネスにつながるというのは、新しいチャンスですね
山川:正直なところ、僕たちも思ってもいなかった商材がヒット商品になっていく経験をたくさんしてきました。なので少しでも「これは」と思うものがあれば、是非色々な日本企業さんからお話を頂きたいですね。
もちろん、マーケティングのお手伝いもさせて頂いていますが、あまり最初から売れるための道筋を完全に固めないと動けないようなスピード感では、アフリカ市場では勝てません。中国と日本企業の違いはそこにあります。
だから、日本の企業がもっとアフリカビジネスにどんどん積極的に参入して、現地でモノを売れるように、僕たちはあらゆる機会を提供していきたいと強く思います。
3.ビィ・フォアードの展望ー他にない物流体制のブラッシュアップとカントリーリスクの回避
―ビィ・フォアードの大きな強みの一つはアフリカ内部への物流網ですが、この先どのようにその強みを磨かれて行くのでしょうか?
山川:中古車やコピー機といった「大きくて重い」商品が運べる盤石な物流体制があること、そこがうちの強みです。40フィートレベルの大きなコンテナを一杯にしてアフリカまで運ぶような日本企業は他にありません。
今後この物流の強みを更に強化するために、コンテナの本数をもっと増やしていきたいと思っています。例えばマラウイ向けに今は月に2本のコンテナを送っていますが、これを毎週に増やしたい。さらに本数を増やしていって、近い将来には毎日発送するところまで持って行きたいですね。
また近々やりたいと思っているのは、容積や重さなどの条件を入力するとトータルコストが一目で分かったり、何時までに出せば2ヶ月後の何日までに届く、などといったことがクリック一つで具体的にシミュレーションできるサービスです。
―その他にビィ・フォアードの強みとしては、どんなものがありますか?
山川: 54カ国あるアフリカ大陸の中でも、主にサブサハラの46カ国とビジネスが一気にできるのも大きな強みですね。
これはカントリーリスクの回避という点でもメリットがあります。例えばジンバブエの通貨危機や、エボラ出血熱が蔓延して国が戒厳令を引くなどといったカントリーリスクが、アフリカビジネスにはつきものです。大手企業ですらなかなか体力的にこれに備えるのは難しい。
でも僕たちはジンバブエが落ち込んだ時もタンザニアが急伸しましたし、マラウイも伸びました。そういった形でアフリカ内でもリスク分散することができます。
4.援助が主流のアフリカビジネスで、エンドユーザーに直接リーチするビィ・フォアードのこれから
―現在、アフリカでビジネスを展開する日系企業のほとんどは、インフラなどのBtoB分野が多い印象です
山川:はい。ただ実際のところインフラ系のビジネスは、ほとんどが「開発援助」として各国からの支援金によって成り立っている側面は強いですね。まともにビジネスとして成り立たせるのは本当に難しい。
アフリカの人たちは、開発援助の一環として道路や港を作ってもらったり、医療製品なども援助されることが多いので、ビジネスをやろうとすると、まずそれが「援助」なのかどうかからよく確認されます。
―このような風潮はビィ・フォアードがアフリカでビジネスを始めた10年前から変わっていないのでしょうか?
山川:変わらないですね。自分たちで何か一から投資してビジネスを立ち上げる、といったシーンはあまり見られないです。だからビジネスとなると不動産業や仲介業などがどうしても多いようです。
―そんな中で、BtoCのビジネスモデル、しかも前払いというポジションを作り上げたのは大きいですね
山川:そうですね、BtoBではなくアフリカのエンドユーザーに直接リーチできる越境ECサイト(BE FORWARD.JP)は、日本のどこを探してもなかなかないですね。そしてオフラインでも我々の抱える6万3千人のBe Forward Supportersというアフリカローカルの会員組織(※グローバルでは現在の登録者数約8万3千人)にリーチできるチャネルを持った企業は他にありません。
―最後に、今後の夢や目標のようなものがあれば、ぜひお聞かせ下さい。
山川:日本企業と一緒にアフリカンドリームを持って、“前へ”進むことです。戦前、僕らのおじいちゃんおばあちゃん世代は、アジアで新天地を開拓しながらビジネスの種を蒔き、商売の活路を積極的に見出してきました。
そしてそのフロンティアスピリットを僕たちのお父さん世代が受け継いで、日本経済を大きくしてきました。僕たち世代もそんな開拓者としての誇りを持ち続けるために、アフリカで積極的に新しい種を蒔いていきたい、そんな風に思っています。