前回、アフリカ進出を成功させた3つの要因として、弊社がいかにアフリカで「商品を確実にお客様の手元に届ける」ことを実現して来たかを述べた。今回は、こうした努力の積み重ねによって得た最も大きな財産のひとつである「ブランド力」と「現地ネットワーク」について説明したい。
中国ともまた異なるアフリカの独特な商習慣に対応していくためには「ブランド力」と「現地ネットワーク」、この2つは非常に大きな成功要因である。約10年に及ぶ中古車販売事業で地道に築き上げてきた弊社と現地アフリカ人との信頼関係は、今や単なる顧客と販売者の関係を超えつつある。我々のビジネスはアフリカにおける彼らの雇用や生活を支え、また彼らも我々の成長を応援する貴重なパートナーであるのだ。
1.10年間のアフリカビジネスで築き上げたブランド力
1-1.アフリカ各国でTOP10に入るサイトパワー
ビィ・フォア―ドのブランド力を示す最もわかりやすい例として、弊社の運営する越境ECサイトBE FORWARD.jpのアクセス数が挙げられる。レソト、マラウィではアクセスランキングのTOP10に入っており、いずれもwikipediaを上回るなど、影響力の高いサイトとしての地位を確立している。
このランキングで興味深いポイントは、上位にランクインしているサイトの大半はSNSや検索エンジンなどであるのに対して、弊社サイトだけが純粋な商業サイトであるということだ。バーチャルではない実業の世界で、ビィ・フォアードはアフリカ人の生活に根付いているのだ。
1-2.プロサッカーチーム・スポンサー等による現地でのメディア露出
また、インターネット以外にも各種キャンペーンやCSRなど様々な活動を行い、ブランドとして現地アフリカ人とコミュニケーションを図っている。
マラウィでは2014年にプロサッカーチームによるチャリティーサッカーマッチ「ビィ・フォアード・カップ」を開催。その後2015年からはBE FORWARD WANDERERS FCの単独スポンサーに就任。チームを強化して行き、2017年には悲願の11年ぶりのリーグ優勝を果たした。
また、日本とアフリカの架け橋となるべく同チームの選手を日本に招聘し、Jリーグのトライアウトや練習への積極的な参加など、移籍を見据えた活動も行っている。(2018年から1名の選手がJ3・Y.S.C.C.横浜に移籍している)
サッカーはアフリカでも非常に人気の娯楽であり、弊社のロゴとコーポレートカラーであるブラッドオレンジのユニフォームはビィ・フォア―ドの名前を広めるのに大きな役割を果たしている。
2.強い信頼関係で結ばれた現地ネットワーク
2-1.アフリカのBOP・中間層における115万人超の顧客ネットワーク
強いブランド力に加えて、ビィ・フォア―ドには現地アフリカ人との強い信頼関係に基づいたリアルなネットワーク力がある。2004年の創業よりこれまで、日本発の中古自動車輸出のリーデイングカンパニーとして、累計63万台の中古車輸出を中心とする様々な海外向けのビジネスを着実に拡大して来た。特にアフリカは売上の6割を超える中心市場であり、購買力のある中間層や消費意欲が旺盛なBOP層(Base of the Economic Pyramid)に対して、約115万人を超える顧客ネットワークを有している。
BOP層については様々な定義があるが、一般的には年間所得が購買力平価(PPP)ベースで3,000ドル以下の低所得ではあるものの旺盛な消費意欲を持つ層を指し、その数はアフリカを始めとした途上国を中心に世界人口の約7割を占めると言われている。ビィ・フォア―ドではアフリカのこういったBOP層を対象に、世界一高品質と名高い日本の中古車を手に届きやすい価格で確実に提供することで、彼らの生活水準の向上に貢献し信頼を築き上げてきたのである。
2-2.約6万2千人のアフリカ人に市場調査が可能な会員組織 “BE FORWARD SUPPORTERS”
2015年からは「BE FORWARD SUPPORTERS(ビィ・フォアードサポーターズ)」という、ビィ・フォア―ドを応援してくれるファン組織を結成。個人の代理業者としてビィ・フォアードの中古車を販売したメンバーに成功報酬を支払うプログラムを展開している。
アフリカを始めまだまだ失業率が高い発展途上国では、こういったプログラムは非常に貴重な収入と認識されており、現在の登録者数はグローバルで約7万5千人、アフリカでは約6万2千人を誇る。メンバーはそれぞれリーダーの元でグループを作り、WhatsAppなどの海外で人気のチャットツールを使いながら日々のビィ・フォア―ドに関する様々な情報を交換し、自分たちの活動に役立てている。ひとつのチャットグループに多い所だと100人ものサポーターがいるグループもあり、口コミを中心に会員数は日々増加している。
弊社はビジネスを展開するアフリカ各国でこういったコミュニティを有しており、最近ではサポーターの協力の元、現地の市場調査も展開している。アフリカ進出を検討する企業の商品やサービスに対し、ローカルのリアルな声を聞くことができる貴重な存在として好評を博している。
2-3.アフリカ14カ国に39の公式オフィスと193拠点、300人を超えるスタッフを雇用
ビィ・フォア―ドでは現在アフリカに39の公式オフィスと193の拠点を持ち、300人を超える現地スタッフが、現地で通関やデリバリーなどの物流業務や販売サポートを行っている。
現地での雇用創出は、新興国ビジネスを根付かせるためには非常に重要な意味を持ち、その持続可能性を保つのに欠かすことができない要素である。しかし、アフリカに進出している世界各国の企業を見ていると、最も手広く拡大している中国企業でさえこの点についてはあまり意識をしていない。多くは中国からアフリカに中国人が出稼ぎにやってくることから現地の人々へ雇用を広げようという意識がそこまで至らないからだ。
新興国でビジネスをする上で、進出する企業と現地の人々の両方がWin-Winとなる関係を築くことを常に意識することで、より良好な信頼関係が生まれていくのである。
3.アフリカビジネスにブランド力が必要な理由と、ブランド確立の秘訣
3-1.独特なアフリカの商習慣
世界最後の発展途上国として、中国と並び名が挙がるアフリカ。その商習慣は、非常に独特であり日本企業の多くが進出しても撤退を余儀なくされるケースは珍しくない。なぜなら、ルールの不透明な商取引や、成熟されていない法整備などリスクが低いとは決して言い難いからだ。
ブランドが知られているということは、こうしたマーケットで戦って行く際に非常に有利に働く。一度現地の人々に信頼されれば、逆に彼らから「一緒にビジネスをしたい、パートナーになりたい」といった形で積極的にアプローチされることが増え、格段にビジネスが進めやすくなる。そして、ビィ・フォア―ドの強みの一つである代金の先払い方式も、ブランドが広まり信頼が確立されたからこそ受け入れられたのである。
3-2.地道に続けてきたアナログな方法こそがブランド確立の秘訣
ある程度大規模な企業であれば、広告代理店などに宣伝プロモーションを依頼し戦略を練って派手なキャンペーンなどを打つことができるだろう。だが、それだけが道ではない。ビィ・フォア―ドではもっとアナログな手法でブランドを育ててきた。例えば、車を購入してくれた人にはロゴが入ったTシャツを一緒にプレンゼントしたり、販売した車に必ずステッカーを貼ってもらう、といった具合である。
また、お祭り事やイベントが大好きなアフリカ人にもっと楽しんでもらうために、SNS上で参加できる写真コンテストを定期的に行うなど、自ら手作りの企画を立て現地の人々が楽しんでくれるコミュニケーションを積極的に行っていった。非常に地味ではあるもののこれが高い評価を受け、アフリカ人にはとても好意的に受け入られた。
アフリカ市場で成功している企業はまだまだ少数派である。しかし、我々はこれまで培って来たブランドとネットワークを最大限に活かし、アフリカに進出を考えている日本企業と共に更に成長していきたいと考えている。日本とアフリカを繋ぐことの可能性はまだまだ未知数である。様々な企業とその可能性を模索していきたい。