アフリカビジネス-最後のフロンティア

アフリカビジネスは最後のフロンティアだというのをメディアでよく見かけます。
Googleでも「最後のフロンティア」で検索すると、やはりアフリカに関する記事が多数見つかります。

フロンティアと聞くととてもポジティブで大きな可能性を感じないでしょうか。しかし、フロンティアの開拓は、誰もが容易にできるものではないでしょう。
もしフロンティアであるアフリカビジネスに取り組もうという場合には、それなりの前知識が必要になります。ここで必要な知識すべてに言及することは、あまりにも多岐に及ぶため大変難しいですが、意外と見落とされがちと思われるポイントに絞って紹介したいと思います。
それは、アフリカのインフラと、インターネットとの関わり方からくる人間関係です。

アフリカビジネスをフロンティアと呼ぶ理由

まず、アフリカビジネスがなぜフロンティアと言われるのでしょうか。単に未開拓だからという理由ではありません。
ビジネス的に可能性がたくさんあるから、ということなら「BRICs」もフロンティアだと言われてもよさそうですが、そのように表現されるのは聞いたことがありません。
なお、BRICsは、ブラジル、ロシア、インド、中国を指しますがSMBC日興証券のサイト(*1)では、「広い国土と多くの人口、豊かな天然資源をもとに今後大きく成長するであろうと注目されています」しかし、「政情の安定感は先進各国と比べて相対的に低い面がありますので、高いリターンを期待できる分、高いリスクもあります。」と紹介されています。
そういった開発途上国としてBRICsの他にもVISTA、ネクスト11、MENAと呼ばれる国々があります。
VISTAは、ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン。
ネクスト11は、ベトナム、韓国、インドネシア、フィリピン、バングラデシュ、パキスタン、イラン、エジプト、トルコ、ナイジェリア、メキシコ。
MENAは、中東・北アフリカ地域です。
繰り返しになりますが、BRICsの説明にあった「広い国土」「豊かな天然資源」、そう聞くと多くのアフリカ諸国についても同じことが言えそうです。
しかし、BRICsやVISTAにはあってアフリカでは不足している重要なものがあります。それはインフラです。
世界的に見て非常に豊かな国、日本に住んでいる私たちはインフラの本当の重要性を実感したことのある人はほとんどいないでしょう。

たまたまおもしろいことに気づいたのですが、Googleで「インフラ」で検索してみると1ページ目の半分がIT用語「データ通信のインフラ」として紹介しているページでした。つまり、本当のインフラはもうあって当たり前、気にすることはほとんどない表れではないでしょうか。

アフリカとインフラ

さて、インフラとは生活やビジネス活動における基盤となるもので社会全体が共有して使う設備です。
道路、水道、電気、ガス、通信などがあります。教育、医療、法制度も含まれます。ビジネスで最重要で見落とされがちなのが、貨幣と貨幣を流通させる仕組みです。

ここにとても分かり易いデータがあります。
経済産業省 資源エネルギー庁のホームページ(*2)では、「サハラ以南のアフリカは68%の人々が電気のないくらしを送っている」とのことです。これは約6億人に相当し、世界の無電化地域で暮らす人の半数になります。

私も2度タンザニアに行ったことがあります。ダルエスサラームの中心部からバガモヨに向かう途中、幹線道路の右側に何百軒もの民家が数キロにおよび集まっている地域がありましたが、よく見かけるはずの電柱が見当たりませんでした。
電気の共有がまだ為されていないのです。タンザニアの最大都市ダルエスサラーム市内においても停電は日常茶飯事。都市ですら需要に供給が追い付いていないのです。都市の外まで電線を延ばさないのも納得です。

都市の外は電気が通ってないくらいですから、銀行もありません。
アフリカ ビジネスを始めようにもお金の受け渡しもままならないのです。

アフリカの多くの国々はこれらの例にとどまらず、今後開発が必要なインフラは、教育、医療、法制度も含めまだまだたくさんあります。

つまり、アフリカではビジネスをスタートさせる土台がまだ整っていないのです。これがフロンティアと呼ばれる理由ではないでしょうか。

整備されたインフラの上でビジネスを始めるのと、そうではないところでビジネスを始めるのとではアプローチから全く違います。
パソコンを使おうにも電気がなければ使えません。インターネットに接続するにも通信環境が必要です。法律が整っていなければ、どんなところにどんなリスクがあるかわかりません。

そういう意味ではまさにアフリカビジネスは、フロンティアという言葉が当てはまるのでしょう。

アフリカビジネスにおけるコンフリクト

もう1つ、少し話が変わりますが、フロンティアと言うとメイフラワー号が連想されます。
メイフラワー号は1620年にイギリスから当時フロンティアであったアメリカに向かった船です。このメイフラワー号に乗船して新天地であるアメリカに渡り開拓した人たちがいました。

フロンティアでの開拓と言っても、原住民がいたわけで、見方を変えれば開拓民は侵略者だったのです。そのため、原住民であるインディアンとの戦争がおきてしまったように、フロンティアの開拓はコンフリクトがつきものであると言えるでしょう。
日本でも、江戸時代にやってきた黒船はビジネスのフロンティアを求めてやってきたのでしょうが、身構えるばかりか排除しようと攻撃する日本人もいました。
北海道の開拓においても開拓民と原住民であるアイヌとの間に争いがありました。

現代においても同じではないでしょうか。アフリカでビジネスを展開しようと安い労働力を求め、新たな市場を求めてやってくる諸外国との間にコンフリクトは既に発生しています。

タンザニアに行ったときにこんな話を聞きました。
中国が莫大な投資をして道路を作っているが、その工事現場で働いているのは中国人たちがほとんどで、現地の人は少ないとのことです。また、中国からやってきた労働者のためのビジネス、例えば中華料理店も中国人が切り盛りしていて、タンザニアにはお金が落ちてこないし、仕事も増えていないと。
さらに悪いことに中国人が作った道路はすぐにでこぼこになったり穴が開いて、タンザニア人の役に立っていないと。
真偽は不明ですが、コンフリクトが発生していることは間違いがないようです。

ニュースにもなりましたが、タンザニアでは中国主導でバガモヨ港を建設し、周辺の道路、線路の設置も計画していましたが、それを中止したとのことです。理由は中国が実質的にタンザニアの利益を奪おうとしているからだそうです。
バガモヨは既存港であるダルエスサラームから10キロメートルくらいしか離れていない近い場所です。ダルエスサラームは東アフリカの玄関であり、急増する物流を前に既に手狭になっています。それを考えれば間違った計画ではなかったと思います。
しかし、中国は港の99年のリース権だけでなく、港を通過する貨物の税の計算や監査も中国が行うことを条件として求めてきたからだといいます。

大きなリスクを取り、大きな利益を求めてフロンティアに進出することは必ずしも悪いとは思いませんが、現地の方々に対する配慮は欠かせません。

最後のフロンティア アフリカビジネスで成功するには

アフリカではインフラがまだまだ整備されておらず、郊外には電柱がなく電気のない世帯がたくさんありますが、持っている情報は先進国に住む私たちとは大きな差はありません。
彼、彼女たちは情報の獲得のためには非常に一所懸命です。離れた場所に住んでいる人から情報を得るためには、携帯電話やスマートフォンは非常に便利です。だから発電機や充電器を用いてよく使っているのです。
インターネットのホームページから情報を取得し、コミュニケーションによりそれをブラッシュアップしているように思います。

思い込みだけでフロンティアであるアフリカにビジネス目的で行ったら「私たちと同じ情報を持つ原住民がいた」と驚かれるでしょう。
確かにインフラ整備はまだまだこれからですが、インターネットによって世界は考え方や行動様式の均一化が急速に進んでいるのです。
先進国ではインフラを整備した上で獲得したインターネットですが、アフリカではインフラの前にインターネットが普及しているのです。
実はここがこれまでのフロンティア開拓と大きな違いだと言えます。

情報格差があることを前提に暴利を得ようとしても、すぐにそれはバレてしまうのです。
アフリカで法律は整っていなくても、さまざまなトラブル事例がインターネットでは共有されていますから、どう対処すればいいか知ることもできるのです。
どんなに良い商品やサービスであろうとも、身勝手に、一方的に、または知らないだろうから教えてやろうとか、そういうことでは買ってもらえません。

アフリカでビジネスを展開するには、現地のことについて教えてもらわなければならないことがたくさんあります。
ビジネスの基本になってしまいますが、やはり相手に尊敬と敬意を持ち、違いはあっても劣るところはない人々だということをまず知ることが、アフリカビジネス成功のスタートであると思います。

次に、アフリカに少数でもしっかりとした人脈を持つ人を介し、できれば何年にも渡って一緒にビジネスをしている人を紹介してもらうことがアフリカでの成功をより確実なものにする助けとなるでしょう。
インターネットが普及していると言っても1対1のコミュニケーションが重視されています。だからこそ人伝にビジネスを展開する必要性があるのです。

奇麗で便利で信頼に足るホームページを立ち上げ、宣伝費用をかけても、ここで紹介したポイントを押さえていなければアフリカでのビジネスが成功することはないと言ってもよいでしょう。

出典

(*1)「BRICs│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券

(*2)「夜の地球を見てみよう!|かがやけ!みんなのエネルギー【教師用解説編】|エネルギー政策広報事業|経済産業省 資源エネルギー庁

(*3)「タンザニア大統領、一帯一路1兆円港湾計画を停止「狂った人にしか受け入れられない条件」|excite.co.jp」(2019年6月29日)

著者: 小山内 裕
コンピューターメーカー 米デルにてアメリカ人、中国人、マレーシア人、シンガポール人、フランス人、ブラジル人などで組織されたグローバルチームのマネージャーを経験。会社勤めの傍らMBAを取得し2008年に独立。
2011年からビィ・フォアードの情報技術整備に参画。メインマーケットであるアフリカを理解することも兼ね各国を訪問。
海外に行けば観光名所よりも朝のマーケットや地元の人々が多く訪れる場所へ行き交流することを好む。