急速な人口増と経済成長が期待されるアフリカ各国において、現在急速に市場規模を拡大しているEコマース(EC)。経済発展に伴い中間層・富裕層も増え、さらに昨今の大幅な円安は日本企業として大きなビジネスチャンスです。アフリカの最新EC事情と進出のための具体的な方法や成功事例を解説します。
アフリカビジネスの将来性
21世紀に入ってから徐々に経済発展が軌道に乗り始めたアフリカ大陸。今後の経済成長のポテンシャルに対し、現在世界的に注目が集まっています。まずは、現在のアフリカで起きている事実について確認していきましょう。
「人口ボーナス期」を迎えるアフリカ
今アフリカが注目される理由として、人類史上最速と言われる飛躍的な人口増加と、平均年齢の若さが挙げられます。
2022年のサブサハラ・アフリカ諸国全体の人口は11億5,000万人でしたが、高い出生率、経済状況や公衆衛生状況の改善等によって2050年にはその2倍近い20億9,000万人に達すると見込まれます。
かつ、各国の平均年齢が10代から20代前半と非常に若く、今後長期にわたって生産年齢人口が増加する「人口ボーナス期」のメリットを享受できることも見逃せません。
国別の平均年齢については、国立社会保障・人口問題研究所の2021年度の統計では中国は36.5歳、インドは28.5歳、ブラジルは34.4歳とされています。このデータからもアフリカの若さが世界的に際立っていると言えるのではないでしょうか。
さらに、比較的政情が安定した国が増えてきたことや、外国投資の増加といった要因により、国によって発展度合いは様々ですが、アフリカ大陸全体としては長期にわたって高度成長期が持続すると期待されています。
アフリカ各国のGDP、一人あたりGDPは?
現在、アフリカには全アジアよりも多い50以上の国家が存在し、その規模は人口2億人を越える大国から100万人以下の小国まで様々です。そのため、各国の経済状況をイメージするにあたっては、各国の全体としての経済規模だけでなく、一人あたりGDPをチェックすると理解しやすいでしょう。
まず、名目GDP総額と一人あたり金額(USD換算)のランキングを紹介します。
・GDP総額ランキング(2023年、IMF(国際通貨基金)統計より引用)
1位 | エジプト | 3939億USD | 人口約1.1億人、堅調な経済成長とインフラ投資が進む |
2位 | 南アフリカ | 3777億USD | 人口約6100万人、南部アフリカ最大の経済大国 |
3位 | ナイジェリア | 3750億USD | 人口約2.2億人はアフリカ最大。世界有数の産油国 |
4位 | アルジェリア | 2448億USD | 人口約4500万人、輸出のほとんどを石油関連が占める |
5位 | エチオピア | 1598億USD | 人口約1.2億人、豊富な労働力により農業、製造業が成長 |
・一人あたりGDPランキング(2023年、人口1000万人以上の国のみ抜粋、IMF統計より引用)
1位 | 南アフリカ | 6138.25USD | |
2位 | アルジェリア | 5323.64USD | |
3位 | チュニジア | 4191.62USD | 人口約1200万人、衣料・機械等の加工貿易と観光業 |
4位 | モロッコ | 3888.59USD | 人口約3700万人、外資の積極導入で製造業が発展 |
5位 | エジプト | 3727.66USD |
一人あたりGDPランキングは地中海沿岸の北アフリカ諸国に偏る傾向がありますが、GDP総額のランキングに入っているナイジェリア、エチオピアなどはアフリカ屈指の人口大国であり今後の発展のポテンシャルが大きいと言えるでしょう。ランキング外の注目国には、東アフリカの経済発展を牽引するケニア、90年代の悲惨な内戦から復興し、アフリカの奇跡とも呼ばれるルワンダなどが挙げられます。
アフリカ各国のGDPの最新状況、ビジネス進出先として注目すべき国については、以下の記事でも紹介していますので合わせてご確認ください。
今なぜ「越境EC」なのか?

このように経済成長が期待されるアフリカビジネスにおいて現在大変注目されているのが「越境EC」つまりAmazonや楽天市場のようにインターネットを使って商品を直接現地の消費者へ販売する手法です。
もともとアフリカ各国は先進国とは違い、既成の商業や金融インフラの乏しさをインターネットや携帯電話を一気に普及させることでカバーしている国が多く、リープフロッグ(蛙飛び)現象とも呼ばれています。
また、どの国も平均年齢が若く、新しいテクノロジーに抵抗が少ないのがアフリカの強みです。インターネット人口の増加や通信インフラの整備も急速に進んでいるため、全体の傾向としてEC市場は今後ますます発展が期待できるでしょう。
アフリカにおけるEC市場規模、将来性を解説
次に、特にEC市場が発展しているベスト3であるナイジェリア、南アフリカ、ケニアについて、各々の市場規模と将来予想を見ていきましょう。
国名 | 総人口 | インターネット人口(2019年) | EC市場規模(2020年推定) | EC市場規模(2025年予測) |
ナイジェリア | 2.2億人 | 8549万人 | 45億USD | 95億USD |
南アフリカ | 6100万人 | 3654万人 | 37億USD | 63億USD |
ケニア | 5154万人 | 2280万人 | 16億USD | 39億USD |
全ての国で急速な市場拡大が見込まれていますが、その理由としては各国のインターネット人口・携帯電話ユーザーの増加と、決済手段としてのモバイルマネーの普及が挙げられます。
特にケニア発のモバイル送金サービスであるM-PESAは、銀行口座の代わりに送金・決済・預金・ローンまで行える総合的な金融サービスとして同国の人口の80%以上が利用する金融インフラとなっています。また、他国にも同様のモバイル送金サービスが普及し、Eコマース市場の高い伸びを支えています。
円安の今が参入チャンス

では、このアフリカEC市場で現在日本企業はどのような状況にあるのでしょうか。
まず、アフリカ各国において、日本メーカー製品、特にメイドインジャパンの製品に対しては品質が良いが高価という印象を持たれています。
比較的知名度が高い分野は自動車で、その理由は日本製の中古車は信頼性が高いため各国で人気だからと、一部の国ではトヨタ自動車など日本の自動車メーカーによる現地生産が行われているからです。
しかし、特に消費財や家電、デジタル機器に関しては、アフリカに進出する日本企業が少ないこともあり、価格、物量で圧倒する中国メーカーの存在感の方が高いのが実情です。
しかし、2024年7月初めの時点で1USD=160円という歴史的な水準に達した現在の円安は、メイドインジャパン製品の輸出に対しては大きな追い風となり得ます。
また、アフリカには経済発展の段階が様々な数多くの国があります。すでにBOP(Base of the Economic Pyramid)と呼ばれる年間所得3,000ドル以下(購買力平価ベース)の低所得者層だけではなく、かなりの数存在する中間層、富裕層に対し、ジャパンブランドの品質、信頼性を訴求するマーケティングの可能性も大いにあると言えるでしょう。
まだまだ物流の不備や商慣習の違いといったハードルはあるものの、急速に発展するアフリカEC市場への参入は、長期的な観点ではマストな戦略となるのではないでしょうか。
アフリカECの代表的なプラットフォーム紹介
JETROの調査によると、2019年末時点でアフリカには631のECプラットフォーム(インターネット上で売り手と買い手を結びつける取引市場)と1900のオンライン店舗サイトが存在し、その数はさらに増え続けています。
もしこれからアフリカにてEC事業を立ち上げるためには、こういったプラットフォームを活用するのが一般的な方法となるため、いくつか代表的なプラットフォームを紹介します。
・ナイジェリア発の「アフリカのAMAZON」JUMIA
2012年にナイジェリアで起業されたJUMIAは、現在はエジプト、アルジェリア、ケニアなど合計10カ国で事業を展開するアフリカ最大のECプラットフォームで、2020年時点の年間流通取引総額は約10億ドルに達しています。
同社が持つ独自のオンライン決済システム「JumiaPay」は、アフリカ各国で用いられている異なる通貨間の決済を安全かつスムーズに処理できる画期的なソリューションとして、各国の販売者、消費者に広く普及しています。
・南アフリカのトップECサイト「Takealot」
Takealotは、2010年に設立された南アフリカ最大のECプラットフォームです。400万点を越える巨大な商品ラインナップだけでなく、独自の物流網による迅速な配送サービスが強みです。また、Mobicredという独自のクレジットサービスを運営しています。
・日本発の自動車、自動車部品ECサイト「株式会社ビィ・フォアード」
2004年設立の「株式会社ビィ・フォアード」は、中古車および自動車部品を総合的に取り扱うECプラットフォームで、アフリカをはじめ世界207の国・地域で商取引を行っています。 アフリカ向け中古車販売累計100万台の実績があり、ECサイトの閲覧数は月間6,000万PV、ネット通販売上高ランキング国内第1位(2023年)を誇っています。
また、同社では現地に確立した販路、マーケティングノウハウ、物流ネットワークを生かしてアフリカビジネス支援事業を行っています。具体的には、現地の市場調査、広告、マーケティング、物流支援といった多様なサービスにより、すでにアフリカへ進出した日本企業のパートナーとして数多くの成功事例へ貢献しているのです。
まとめ
今回記事では現在急速に成長しているアフリカのEコマース市場について、現在の市場規模や将来性、代表的なECプラットフォームなどについて紹介しました。
アフリカへのビジネス進出を検討するためには、まず現地調査が必要です。株式会社ビィ・フォアードの運営する「マーケットリサーチサービス」では、アフリカをはじめ約53の国と地域のユーザーを対象に、オンラインアンケート調査やグループインタビュー調査を実施しています。
その他、アフリカの企業や個人にリーチする「バナー広告サービス」、商品や物資の輸送には「海外輸送サービス」など、幅広い内容でアフリカへのビジネス進出をサポートします。ご興味を持たれるものがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
また、アフリカでの越境ECの事例として、株式会社ビィ・フォアードがこれまで培ってきたビジネスモデルおよび、物流、在庫、広告などの具体的なやり方について以下の記事でも紹介しています。ぜひご一読ください。