日曜日, 4月 20, 2025

将来は世界最大の経済圏へ!「アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)」とは何か

21世紀のビジネスフロンティアとも呼ばれ、資源高、人口増、社会インフラ整備などに伴い持続的な発展が見込まれるアフリカ諸国。

2021年、域内全体の自由貿易を促進し、将来的にEUのような単一市場形成を目指す「アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)」が発足しました。

本記事では その意義や期待される経済効果について解説します。

「全アフリカによる単一市場」の建設が始まった

「アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)」とは?

まず「アフリカ大陸自由貿易圏」とは、具体的に何を意味するのでしょうか。

これは一言で言えば、アフリカ大陸全体をヒト、モノ、カネ、サービスが自由に行き交いシームレスにビジネスが行える単一市場とする、という非常に壮大な構想です。

この枠組みにはすでにアフリカ全55ヶ国のほぼ全てが加盟しており、現時点でもその人口規模は約14億人に達しています。

それだけに、真の意味での実現までにはまだまだ数多くのハードルが残っていることも事実です。

まず、この構想の加盟国、発足の経緯、何を目的とした枠組みなのかなど、基本的なところから解説を始めたいと思います。

AfCFTAの読み方

アフリカ大陸自由貿易圏の英語での略称「AfCFTA」は、”African Continental Free Trade Area”の頭文字で、「アフクフタ」と読みます。

AfCFTA 加盟国、人口、経済規模

まずAfCFTAの構成国ですが、アフリカ連合(AU)加盟国全55ヶ国のうち、唯一エリトリアを除く54の国が参加し、2019年4月には、AfCFTA設立協定の発効条件であった 22カ国の国内批准手続きが完了しました。

事務局はガーナの首都アクラに置かれ、現在の事務局長は南アフリカ出身のワムケレ・メネ氏が務めています。

すでに紹介した通り、AfCFTA加盟国は全体で14億人という巨大な人口を抱えていますが、さらに、現在、アフリカは史上最速とも言われる驚異的な人口増加の真っ最中です。

国連の発表によると、2022年のアフリカ全体の人口は14億820万人でしたが、2050年にはその2倍近い24億6312万人に達すると見込まれています。

さらに注目すべきは人口に占める若者の比率の高さです。

少子高齢化が進む先進諸国とは対照的に、アフリカ大陸全体としての平均年齢はなんと20歳以下と非常に若いため、今後長期にわたって生産年齢人口が増加する人口ボーナス期が期待されます。

政情の安定、外国投資の増加という追い風に乗ることができれば、アフリカ大陸全体で日本の高度成長期のようなロングスパンの経済成長が期待できるでしょう。

また、AfCFTAの経済規模については、アフリカ大陸全体のGDPは現在約3.4兆ドル、2024年と2025年にそれぞれ3.8%と4.2%の成長が見込まれています。

この成長率は世界平均を上回る値であり、将来的に世界の経済成長をアフリカが牽引する時代が来ることを予感させるものと言えるのではないでしょうか。

AfCFTA 設立の「目的」とは?

次に、AfCFTAがなぜ設立されたのか、その「目的」について見ていきましょう。

冒頭に述べた通り、この構想は、アフリカ大陸をヒト、モノ、カネ、サービスが自由に行き交う単一市場とするために、加盟国の間において関税を撤廃し、貿易やビジネスのルールを共通化することを目指しています。

その背景としては、アフリカ各国が抱える貿易面の課題があります。

現状、アフリカ各国の貿易状況は、輸出入ともにアフリカ以外の国との取引が中心で、貿易額全体に占める域内比率はわずか14%と非常に低い状況なのです。

この要因としては、アフリカ域内向け輸出品を持つ工業国が少ない、特定品目の輸出に偏った国が多い、天然資源・農産物・原材料といった輸出商品は先進国(特に旧宗主国)との取引に偏りがち、多くの国の関税率が高く取引の活性化を妨げている等といった理由が挙げられます。

このような課題はアフリカの経済発展を妨げる原因でもあるので、AfCFTAの枠組みで域内の関税を撤廃し、貿易ルールを共通化することで自由貿易を推進しようとしているのです。

結果として域内での貿易が活性化し、アフリカで生産されるモノやサービスの付加価値が高まれば、アフリカ全体の経済発展と世界における競争力向上に繋がるでしょう。

具体的な課題と取り組みについては次の章で詳しく解説します。

アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)がもたらすもの

何がアフリカの経済発展を停滞させてきたのか

まず、今までアフリカの経済が長い期間停滞していた要因の一つに、アフリカ諸国の貿易構造の特徴をあげることができます。

それは、多くの国が自国で生産する農産物・水産物や原油、天然資源といった原材料の輸出に頼っており、さらに単一品目に偏っている国が多いという特徴です。

例えば、アフリカ最大の人口を持つナイジェリアは世界有数の産油国で、輸出額の79%は原油と非常に偏った構造となっています。

このような状況は、ザンビアにおける銅(同国の輸出額全体の約7割)、ボツワナにおけるダイヤモンド(同 約9割)、マリにおける金(同 約7割)、エチオピアにおけるコーヒー(同 約4割)など非常に多く見られます。(出典 帝国書院 高等学校 新地理総合)

このように単一品目に偏った経済構造は「モノカルチャー」と呼ばれていますが、一体どういった問題があるのでしょうか。

まず、特定の輸出品目に依存していると、国際市場における価格変動や景気動向などの影響を受けやすくなります

また、農産物・水産物の場合は天候不順、病害、乱獲といった要因で生産高が不安定になるリスクもあります。

例えばチョコレートの原材料であるカカオ豆は世界シェアの大半が西アフリカのコートジボアールとガーナにて生産されています。

しかし、今年度は異常気象、カカオの木を枯死させる「カカオ膨梢ウイルス」の流行、環境破壊による水源の汚染といった原因により記録的な不作が予想されているのです。

また、アフリカ諸国におけるモノカルチャー経済は、旧植民地時代のように旧宗主国へ原材料を供給して工業製品は輸入に頼るという貿易構造をそのまま引きずっている例が多く見られます。

近年では、旧宗主国に代わって中国製の工業製品が高いシェアを独占している国も少なくありません。

結果、国家として独立していても国際貿易の中では実質的に植民地経済が続いているという状況がアフリカ各国の経済発展の足枷となっていると言えます。

さらに、外貨収入を特定の天然資源に依存する経済構造では、政治権力を握ったごく一部の人々が国家の富を独占する状況に陥りやすいという問題もあります。

アフリカ諸国の民主化や経済発展が妨げられてきた理由に、長期独裁や深刻な腐敗、貧富の差の固定化が挙げられますが、元をただせばこのような経済構造が原因となっている例も多いのです。

単一市場によって何がどう変わるのか

では、AfCFTAの発足によって今後期待されることとは何でしょうか?

第一に、アフリカ全体を単一の経済圏として域内貿易を促進することにより、過去の植民地時代からの経緯で経済的な結びつきが弱いアフリカ諸国の団結を強めるという効果です。

もう一つは、アフリカのモノカルチャー経済脱却と工業化です。

域内に国をまたいだサプライチェーンを構築し、域内で原材料供給、工業製品の生産、国を跨いだ販売を全て完結できるビジネスモデルが確立できれば、質の良い経済発展とより多くの人々の生活水準の向上に繋がるというわけです。

では、その結果として具体的にどのような経済効果が期待されているのでしょうか。

世界銀行の試算によれば、AfCFTAの発効によってアフリカ域内で関税および非関税障壁が撤廃されることにより、2035年までにアフリカ全体の実質所得が7%(約4450 億ドル)向上し、4,000万人が極度の貧困状態を脱する可能性があるとされています。

この目的の達成へ向けた関税・貿易ルール等の交渉が現在AfCFTAの枠組みで進められており、具体的な進捗としては下記の「フェーズ1」については大枠において合意済みです。

【フェーズ1】

・物品貿易
タリフラインベースで90%以上の関税を、5年間で撤廃する〔後発開発途上国(LDC)は、10年間〕。残りの10%のうち7%は、センシティブ品目として10年間で関税削減する(LDCは、13年間)。3%の関税品目は自由化の対象から除外可能。

・サービス貿易
ビジネスサービス、通信サービス、金融サービス、輸送サービス、観光・旅行関連サービスの5つの優先分野で交渉中。

・紛争解決メカニズム
締約国間の紛争の友好的、透明かつ迅速な解決を目的とする。紛争解決機関、裁定委員会、第2審のための上訴機関で構成。

・関税・貿易の円滑化
締約国間で合意した規則について実施・促進する。

交渉と並行し、2023年には参加7ヶ国(カメルーン、エジプト、ガーナ、ケニア、モーリシャス、タンザニア、ルワンダ)にて、AfCFTAのフレームワークを実際に用いてコーヒー、紅茶、セラミックタイル、電気部品、ドライフルーツ、加工肉などの実験的な貿易が行われました。

しかし、2022年10月にケニアから船便で輸出された紅茶がガーナに到着したのは2023年2月、さらにガーナで品質検査を受け承認を得るのに5カ月を要したという報告もあり、域内の輸送に要する時間や、各国における法規制といった非関税障壁はまだまだ残っているのが実情です。

今年2024年以降は、この実験プログラムに南アフリカなどが加わり、合計35ヶ国で実施される予定となっています。

また、AfCFTAの各国は引き続き精力的に交渉を進めており、今後は、さらに経済連携を強化するためにフェーズ2(知的財産権、投資、競争政策)、フェーズ3(デジタル貿易、貿易における女性と若者)といったテーマで交渉が予定されています。

21世紀のアフリカにおける、ITなど新たなテクノロジー等を活用した急速な経済発展を象徴する「リープフロッグ(蛙飛び)」というキーワードがありますが、AfCFTAの枠組みが早期に立ち上げられれば、まさにアフリカ全体の発展に向けた大ジャンプと言えるでしょう。

●関連記事:アフリカ最新ビジネストレンド リープフロッグ現象がもたらすアフリカの革新

日本企業のビジネスへの影響

最後に、AfCFTAがもたらす日本企業のアフリカビジネスへの影響や新たなチャンスについて考えてみましょう。

代表的な例として、日本製品をアフリカで生産し、アフリカ各国で販売するビジネスモデルを取り上げてみたいと思います。

まず販売については、現状のアフリカビジネスでは、域内の物流が発達していないために販売先の一つ一つの国でゼロから販売拠点と物流経路を立ち上げねばなりません。(弊社ビィ・フォアードでは、すぐにアフリカで輸出販売を始められる代理掲載販売サービス(BE FORWARD Marketplace)もご用意しております。ご興味をお持ちでしたら、そちらもぜひご覧ください。)

現状でも西アフリカ諸国経済共同体(ナイジェリアなど15ヶ国)、南部アフリカ開発共同体(南アフリカなど15ヶ国)といった地域別の経済共同体は存在していますが、その域内でも実際のビジネスにあたり様々な障壁が残っているのが実情です。

AfCFTAによって関税や、物流などの非関税障壁の両面が改善され、さらにアフリカ全体が単一市場となれば、これらの枠を越えたビジネス展開が期待できるというわけです。

また、アフリカ域内で工業製品を生産する際にも、原材料や部品のサプライチェーンをアフリカ域内で構築することによって大幅なコストダウン、納期短縮へ繋げられる可能性があります。

アフリカにおける工業生産が軌道に乗れば、将来的には現在は中国、東南アジア、インドなどが担っている、グローバルな生産拠点としての役割も期待できるでしょう。

このように、AfCFTAは将来的に非常に大きな可能性を秘めているため、その動向については引き続き注目していく価値があると言えそうです。

まとめ

今回は「アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)」について、その設立の意義と最新動向、想定される日本企業のビジネスへの影響について紹介しました。上記のようなアフリカの最新情報、アフリカへのビジネス進出にご興味をお持ちでしたら、お気軽にお問い合わせください。

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アフリカビジネス事務局
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BE FORWARDは、中古自動車の輸出販売をメインに、アフリカに関するビジネスを幅広く展開しています。 月間販売台数15,000台、アフリカをはじめ世界207の国・地域で商取引を行うグローバルカンパニーです。 越境ECサイトとしては、月間6,000万PV、ネット通販売上高ランキング国内第1位(2023年)。 創業20年、つねに前へとアフリカでのビジネスを切り拓いてきました。その経験と実績をもとに、アフリカビジネス進出を検討する上で役に立つ、アフリカ現地の最新情報をお届けします。

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